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「不動産だけを買うか、会社ごと不動産を買うか」
清田博之の賃貸、コレでよかろうもん 第二十六回

不動産だけを買うか、会社ごと不動産を買うか

格好つけて、「コロナ鍋大変ですが頑張りましょう!」と手紙に書いて、「なべ?」と返信が来て恥ずかしい思いをしたばかりの税理士の清田です。背伸びをしないのが一番ですね。

さて、今回は、不動産投資をする場合に不動産として買うのか、会社ごと買うのかという場面でのメリット、デメリットを見ていきたいと思います。

1.会社ごと不動産を買うとは?

通常は、不動産として買うという場面ばかりだと思いますが、時々、売主が法人の場合に、会社ごと買わないかと言われているという相談をうけることがあります。

会社として買うというのは、物件ごとに法人を作って法人で買っている売主から、対象物件を持っている法人を買い取る(法人のオーナーが変わる)ということです。

実際には、売主からその会社の株式を買うということになります。

2.会社として買うことのメリット・デメリット

会社として買った場合には、不動産として買う場合とどのような違いがあるのでしょうか。

(1)登録免許税と不動産取得税

まずは、買う対象が不動産ではないので、購入時に不動産取得税や登録免許税がかからないという点があげられます。

不動産として買う場合は、登記をその売主の会社名義から新しい買主の名義に変える必要があり、その際に、固定資産税評価額の2%の登録免許税と司法書士さんに頼めば司法書士さんへの報酬が必要になります。

また、固定資産税評価額の1.5%~4%の不動産取得税もかかります。

しかし、売主の会社の株式を買い取るのであれば不動産の名義はその会社の名義のままで会社のオーナー(株主)が変わるというだけなので、登録免許税や不動産取得税もかかりません。

不動産として買う 会社として買う
不動産登記簿の名義変更の費用 登録免許税(固定資産税評価額の2%)と司法書士さんの報酬がかかる 不動産ではないので、不動産登記簿変更に関する登録免許税不要。
不動産取得税 土地については、固定資産税評価額の1.5%、住宅については3%、その他の建物については4%の不動産取得税がかかる 不動産ではないので、不動産取得税不要
新しく法人を作って買いたい場合の法人設立費用 買主側で新しく法人を用意する必要があるので設立費用がかかる 売主の会社をそのまま引き継ぐので設立費用は不要

 

(2)借入と抵当権設定費用

また、売主の会社が借入をしている状態の場合、会社として買う場合は、その借入ごと引き継ぐことになり、担保権の設定等もそのまま引き継ぐので、対価の金額が借入の分だけ少なくなり、新たに借り入れをする金額は少なくて済む場合があります。

たとえば、1億円の物件で9000万円の借入が残っている場合、不動産として買う場合は、借入は引き継げないので、買主が新たな借入をして代金を払う必要があります(たとえば、1000万円の頭金と9000万円の借入をして支払う)。

一方で、会社として買う場合は、借入はそのまま引き継ぐので、その分代金は少なくなります(たとえば、差額の1000万円を株式の購入代金として支払う)。

不動産として買う 会社として買う
物件の融資 借入は引き継げないので、買主側で新たに借入れをする必要がある。 借入を引き継ぐ。借入を引き継ぐ分だけ代金の金額は少なくなり、資金調達の金額は少なくなりやすい。株の購入代金が自己資金でまかなえれば新たな融資を受ける必要がない。
抵当権設定費用 買主側で新たに担保権を設定し直すので、借入額の0.4%の登録免許税等の費用がかかる。 資金調達の金額が少ない分、担保権設定の費用等も少なくなりやすい
融資の受けやすさ 一般的な不動産融資なので金融機関での取扱い事例が多い 取扱いの事例が不動産よりも少なく、株式購入代金として融資を受けるのは難しい場合がある。

 

(3)購入後の減価償却費やその他の費用

購入後の減価償却費やその他の費用についても以下のような違いがでます。

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減価償却費 買主側で新たに取得したものとして売却価格を土地建物に区分して集計し、新たに計算をし直す(売主の購入時の情報は引き継がれない)。 売主が不動産を購入した時の情報(取得価額、耐用年数、減価償却の額)を引き継ぐことになる。
火災保険やエレベーター保守契約、借主との賃貸借契約等の契約関係 買主側で新たに契約をし直す必要がある。 契約関係をそのまま引き継ぐ。入居者やその他の契約相手にとっては、貸主・契約相手は会社のままで代表者が変わっただけ。
売主の会社が訴訟や税務リスクなどを抱えていた場合 物件固有の問題は引き継ぐ事になるが、会社としての訴訟や税務リスク等は引き継がない 会社に訴訟の状態や税務リスク、未払残業代支払問題などがあればそのまま引き継ぐことになる。

 

(4)将来売却をする時の違い

将来、対象物件を売却しようとする場合にも、不動産として買っていたか会社として買っていたかによって、以下のような違いがでます。

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不動産として売却する場合 買った時の不動産価格をベースに計算した売却損益についての税金(個人で買っていた場合は譲渡所得税、法人で買っていた場合は法人税)を払う。 もとの売主の購入時の情報等を引き継ぐので、もとの売主が買った時の不動産価格をベースに計算した売却損益について税金(法人税)を払う。

その後、法人を解散して個人でお金を受け取る場合には、みなし配当部分に個人で最大55%の税率で課税(所得税+住民税)されることもある。

会社として売却する場合 株式を新しいオーナーに売る。株式購入時の価格と売却時の価格の差の分に譲渡所得税(20.315%)がかかる。

会社から役員退職金の支給を受けることで売却価格を抑えることもできる。

 

(5)契約が成立するまでの時間と費用

会社ごと買う場合には、会社の権利義務関係をそっくり引き継ぐので思わぬリスクを抱える可能性があるため、契約までに時間と費用をかけて調査を行うことが必要になり、契約成立までに要する時間と費用も違ってきます。

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契約関係等の確認に要する時間と費用 不動産についてのみ確認すればよいので時間も費用も大きくかからない。 売主の会社の契約関係等をそのまま引き継ぐことになるので、契約関係やリスクの確認に時間を要する。場合によって弁護士や税理士等の専門家に調査を依頼することになり調査費用がかかる。

 

〇 まとめ

・売主が物件専用の法人を作っていた場合には、不動産のみを買うのではなく、会社ごと買うという選択肢がありえます。

・会社ごと買う場合には、不動産ではないので不動産の名義を変えるための登録免許税や不動産取得税はかかりませんが、契約関係等をそのまま引き継ぐため、調査に時間と費用がかかります。

・会社ごと買う場合には、思わぬリスクを抱える可能性もあるので、専門家によく相談しましょう。

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ABOUT ME
清田博之
NPO法人相続アドバイザー協議会認定会員、一般社団法人家族信託普及協会会員 相続問題に力を入れており、地主さんや大家さんの相続対策のご相談にのる事が多いです。地主さんや大家さんの相続対策については、税務の知識だけでなく、経営や法律、登記、測量、鑑定、売買等の幅広い知識が必要であると感じます。依頼者に寄り添う立場で相続問題の解決に取り組む心ある弁護士さん、司法書士さん、不動産会社さん、FPさん、不動産鑑定士さん、土地家屋調査士さん、一級建築士さん達とも連携して相続問題の解決に取り組んでいます。信頼できる専門家ネットワークで大家さんの賃貸経営と相続に関するかけ込み寺になりたいと考えています。
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