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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第三回】不動産鑑定士・住宅診断士
皆川 聡が斬る!③

住宅診断と不動産鑑定評価とのコラボによる有効な活用方法③

前回は、「建物評価に対する常識が変わりつつあることに加え、融資の常識も変わってきている」ことを記載させていただきました。
今回は、住宅診断の必要性について、ちょっと掘り下げて記載させていただきます。

1.住宅診断の目的

住宅診断の目的は、

①診断により、建物に関する劣化状況を明らかにし、
(リスクの顕在化)

②その劣化状況に基づき、具体的に建物のライフサイクルコスト等を明示し、
(中長期修繕計画)

③中長期修繕計画を活用して、建物を安心して、より長く使用できること
(建物への安心と価値向上)

にあると言えます。

2.住宅診断の調査のポイント

では、住宅診断とはどのようなポイントを調査しているのかと言いますと、主に、外装、
内装、バルコニーやその裏、床下、小屋裏、水回り、設備などのチェックを行います。

建物は水に弱いため、建物の施工の際には、しっかり止水することと、また、建物内部に
入ってしまう水もあるので、その水が滞留している状態を防ぐためにも、その水の逃げ道を確保してあげることが必要になります。

経年劣化により、コーキングの硬化によるひび、サッシ廻りのクラック、屋上やバルコニーの笠木周辺などから水の侵入が一般的に多く見受けられます。

また、劣化の状況は、陽当たりや通気や風圧などによっても異なってきます。
例えば、コーキングについては、南側と北側では劣化のスピードが異なります。陽当たりの良い南側の方が北側よりも劣化のスピードが早まる傾向にあります。

また、地盤の状況でも建物内に傾きが生じますので、それがもとで歪みやクラックが生じ、雨漏りの原因になったりします。ですので、建物についても人間の身体同様、定期的なチェック(住宅診断)が必要になるのです。

とは言いましても、実は住宅診断だけでは足りないことがあります

3.耐震診断の必要性

それは、昨今地震被害なども多いので、特に旧耐震の建物(昭和56年5月31日以前に確認申請をされた建物)などは、住宅診断のみならず耐震診断などもされることをお薦めいたします

特に開口部が多い建物は、建物の重心と剛心とのポイントがかなりずれてます(偏心率が高い)ので、壁の補強などにより、そのずれを縮める必要があります。

4.建物の本当の価値とは

このように、建物は個々に施工の時期や施工の状態、修繕の有無やその方法によって、劣化状況が異なりますので、チェックポイントがたくさんあります。

にもかかわらず、建物を杓子定規に法定耐用年数で評価してしまうことには、バブルまでの時代ならスクラップアンドビルド等で良かったと言えますが、ストック重視社会の昨今においては、きちんと個々にチェックする必要があると言えます。

住宅診断をしっかり行うことにより、建物の鑑定評価もより精緻化していくものと思われます。

例えば、大規模修繕をしているのに、法定耐用年数で評価されてしまったという場合や、
その逆で、遠目で綺麗そうではあるが、近くでしっかり観察すると、実はコーキングが剥がれ透湿防水シートがあらわになっていたり、タイルの浮きや目地の痛みなども発見できたりします。

このようにリスクを顕在化することにより、それを基に中長期修繕計画を立てることができ、今後の建物のライフサイクルコストを把握できるようになります。

このようなアプローチこそが、建物の本当の価値を決定する大きなポイントの一つだと言えます。

ですので、住宅診断を今後の皆様の不動産投資などにお役立ていただきますと幸いです。

ABOUT ME
皆川聡
株式会社Aoi不動産鑑定 大手不動産鑑定会社に約8年従事し、メガバンク、政府系金融機関、地銀、信用金庫、信用組合などの金融機関の担保評価をメインに約2500件の案件を携わり、国際線ターミナルの評価の実績もあり。 退職後、平成27年4月に開業。 開業後は、税務対策の鑑定評価や裁判調停等の鑑定評価での多数実績。住宅診断を反映した鑑定評価にて、より清緻な鑑定評価を行っており、鑑定評価額だけではなく、皆様の建物の日ごろのメンテナンスのポイントなどもご提案し、ご好評をいただいております。また2020年10月には、相続税の還付請求にて、他の不動産鑑定士が国税不服審判所にて否認された案件を、その後当職が不動産鑑定を担当。圧倒的な不動産鑑定評価により、東京地裁において、国税庁との裁判で無事完全勝訴しております。
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