~高級住宅街の罠~
こんにちは!
一級建築士・不動産鑑定士の田口です。
今週は『高級住宅地の罠』について考えてみたいと思います。
高級住宅地なら問題ないじゃないか。何が罠だ。
しかしながら、ひそかに進行する傾向。
いえ、最近顕著な傾向ともいえるでしょう。
そこはかつて皆が憧れた高級住宅地。
なのに、売却活動しても反響が薄い。
現地を見てみれば・・・
街並みは素晴らしいのに、空家、空地がちらほら・・・
若い人が少ない。シニア世代が多い。
どうしてどうして?
しかしこれが時代の流れというものなのかもしれません。
コンビニやお店も近所にあまりなくて、
区画整然と高級感ある街並みが形成されている。
昔ながらの高級住宅地というのは、結構丘陵地が多かったりします。
UPDOWNが結構あったり、
道路と敷地とに高低差があったり。
それに敷地規模が大きく、ゆったりと建物が建てられていることが多い。
植栽もしっかりなされ、せせこましさがない。
これって、主に都市計画や自主規制によって、形成されているんですよね。
建蔽率や容積率、壁面後退といった規制が厳しいんです。
あれ、それっていい話じゃないか!
確かに。
そうなんです。
でも、例えば、同じ100坪の敷地でも、
建蔽率容積率が60%/200%の場所と、
建蔽率容積率が50%/100%の場所とでは、
建てられる建物のボリュームが異なる。
厳しいエリアですと、建蔽率容積率が40%/80%の場所もある。
100坪の土地があっても、単純に考えて、
1階40坪、2階40坪、延床面積80坪の建物しか建てられない。
建物の平面レイアウトが敷地の半分以下なのですから、庶民の感覚としては、
ええ!!?
って感じです。
でも、高級住宅地の余裕ある家構えはここに理由がある。
さらには、敷地分割の規制も大きい。
規制がなければいくらでも分割できて、ミニ戸建分譲が増える。
高級住宅地には、最低敷地面積100㎡とか150㎡といった規制がある。
これって、それ未満の敷地規模に分割できないということ。
ミニ戸建ては建てられない。
だから高級感がエリア全体として保たれる。
こうして高級住宅地たる地位を維持してきた。
一方で、そんな余裕ないよ!
という時代でもある。
UPDOWNはシニアにはきついよ。
という時代でもある。
親から譲り受けた屋敷があっても管理できないよ。
共働きの自分たちとしてはマンションの方がいい。
という時代でもある。
最近狭小敷地に3階建の建売、というのもよく見ますね。
住環境や好き嫌いは別として、土地の高度利用という意味では、 狭小3階建というのは利用度が高い。
都心に狭小住宅、これぞよし!
という方も多いと思います。
土地を買って注文住宅を建てるようなお客様も、いまどき限られてきている。
ハウスメーカーで家を建てる予算があれば都心部のタワーマンションが買える。
なんておっしゃるお客様も多い。
こんな時代の変化によって、不動産の在り方や不動産価値が変動してしまうということ。
ミニマリストになって、
通勤がラクな都心に、コンパクトに居住するのは、今時合理的ですよね。
インターネット環境やスマホの普及、各種シェアリングサービス、
物流事情の改善などが、こういった可能性をより拡大していると思います。
つまるところ、このように考えてみることもできます。
人々の時間の使い方や価値観の変化によって、不動産価格は大きく変動する。
より時間密度の高い生活や生産性を求められる働き方、スマートフォンをはじめIT環境が劇的に変わってきたこと。
住環境より利便性を求める価値観の変化。
こういったことによって、不動産価格も大きく変動するということです。
高級って何?
所有って、意味あるの?
そんな素朴な質問に明確な解がない不動産は、この先不安定化するかもしれませんね。
しかし時代に求められている不動産は、この先も安定性を有すると思います。
構造的に人口減少という問題を抱えた日本ですが、
それ以上に場所的な価値を有する立地や空間としての利用価値が高い場所については、 人口減少を相殺して余りある価値の上昇がみられるかもしれません。
ただ、これもまた、変動の激しい時代においては、絶対はありません。
結局何が言いたかったの?
って?
緻密な利回り計算も大事だけど、
もっと大雑把に、その場所、立地、人々の活動に着目して、大きく判断することも 大事だよ、ということ。
また来週!