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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第428回】不動産鑑定士・住宅診断士
皆川 聡が斬る!③

賃料値上げ交渉を成功させるための4つのポイント

こんにちは、今月担当の不動産鑑定士・住宅診断士の皆川聡です。
前回までの家賃値上げの方法と注意点について、
記載させていただきました。
今月3回目は、賃料値上げ交渉を成功させるための
4つのポイントを記載させていただきます。
不動産投資において、
賃料収入を最大化することこそ資産運用の根幹といえるでしょう。
その中でも、既存物件における賃料改定交渉(値上げ交渉)は、
キャッシュフローの改善に直結する重要なアクションです。
しかし、値上げ交渉は「一方的なお願い」では成立せず、
入居者様にとっても「合理的に受け入れられる根拠」の
提示が求められます。
ここでは、不動産鑑定士・住宅診断士の視点から、
賃料改定交渉における4つの重要なポイントをお伝えします。
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① 適正賃料の客観的把握
まず重要なのは、
現在の賃料が市場に対して妥当かどうかを把握することです。
不動産鑑定士は「比準賃料(周辺相場)」
「収益賃料(収益性)」「積算法」などを用いて、
物件特性に即した賃料水準を導出します。
これにより、「上げ幅」や「交渉の正当性」を
数値で明示できるため、
入居者様との交渉が極めて現実的かつ
説得力のあるものになります。
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② 経済事情の変動を整理する
多くの契約には
「経済事情の変動によって賃料が不相当となった場合の改定請求」が
可能な条項が含まれています。
例えば、地価の上昇、物価の上昇、
周辺商業施設の充実度や価値の向上、
税負担や経費項目等の増加などが該当します。
これらを資料化・数値化して提示することで、
入居者様に対して「客観的な事情変更」を
理解させやすくなります。
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③ 設備更新や建物改善による付加価値提示
値上げに対する入居者様の納得を得るには、
「その金額に見合う価値」を可視化することが効果的です。
たとえば、外壁修繕・空調交換・防犯強化・
共用部のリノベーションなどの実施は、
建物の使用価値を高める要素です。
これらを「賃料増額の根拠」として組み込むことで、
単なる値上げではなく
「合理的な対価交換」として交渉が進みやすくなります。
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④鑑定評価書の活用で交渉に説得力を
値上げの根拠を専門家が記した
鑑定評価書や調査報告書として提示することで、
交渉は客観的かつ冷静に進みます。
また、万が一調停や、さらに、
訴訟等の法的な局面になった場合にも、
これらの資料は大きな効力を発揮します。
投資家の主張だけではなく、「
中立的な専門家による合理的評価」としての裏付けが、
交渉成功のカギとなるのです。
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【まとめ】
賃料値上げ交渉は、「感情」ではなく「
根拠」で進めることが大切です。
不動産鑑定士・住宅診断士による
専門的知見を活用することで、
数字と論理で交渉を組み立て、入居者様に納得してもらえる
「正当な賃料」の再構築が可能になります。
投資家として収益を安定化させるためにも、
鑑定士との連携は極めて有効な戦略の一つです。

今回はここまでとなります。
皆様のお持ちの物件の資産形成の
一助としてご活用いただきまして、
少しでも皆様のご参考になれば幸いです。
今回も最後までお読みいただきまして、
誠にありがとうございます。

ABOUT ME
皆川聡
株式会社Aoi不動産鑑定 大手不動産鑑定会社に約8年従事し、メガバンク、政府系金融機関、地銀、信用金庫、信用組合などの金融機関の担保評価をメインに約2500件の案件を携わり、国際線ターミナルの評価の実績もあり。 退職後、平成27年4月に開業。 開業後は、税務対策の鑑定評価や裁判調停等の鑑定評価での多数実績。住宅診断を反映した鑑定評価にて、より清緻な鑑定評価を行っており、鑑定評価額だけではなく、皆様の建物の日ごろのメンテナンスのポイントなどもご提案し、ご好評をいただいております。また2020年10月には、相続税の還付請求にて、他の不動産鑑定士が国税不服審判所にて否認された案件を、その後当職が不動産鑑定を担当。圧倒的な不動産鑑定評価により、東京地裁において、国税庁との裁判で無事完全勝訴しております。
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