築古のアパートを所有しています。
あと1年で減価償却が終わってしまいます。
減価償却が終わってから、建物を法人に売却すれば、その法人で新たに減価償却がで
きるようになりますか?
それであれば、減価償却が終わった都度、法人に売却することで、
繰り返し減価償却ができるようになるという理解でよいでしょうか?
A
結論から申し上げると、法人で減価償却できるようになります。
しかし、個人から法人に売却するときに、譲渡税がかかってきます。
(個人から法人に売却する売却金額は、時価でなければなりません)
例えば、500万円で購入した建物(住宅用)を6年間減価償却をし、
未償却残高(簿価)が1円になっている。
この建物を法人に500万円(時価)で売却した場合にかかる費用と節税効果は
いくらなのか計算してみます。
(この建物の固定資産税評価額は300万円とする。)
《個人が払う譲渡所得税・住民税》
500万円-25万円(※)=475万円
475万円×20.315%(長期譲渡税率)=約97万円
(※)譲渡収入×5%が、取得費よりも高い場合は、
譲渡収入×5%を取得費として使用することが可能です。
《法人が払う登録免許税・不動産取得税》
300万円×2%=6万円(登録免許税) 司法書士手数料5万円 合計11万円
300万円×3%=9万円(不動産取得税)
移転にかかるコスト=約97万円+11万円+9万円=約117万円
移転するために117万円かかることになります。
次に、法人で減価償却が500万円取れることになりますが、その節税効果はどのくらいか
計算してみます。
《法人が500万円の減価償却を取った場合の節税効果》
500万円×約23.2%(※)=約116万円
(※)令和2年度の中小法人の所得400万円超800万円以下の実効税率(概算)
116万円-117万円の差額の1万円が損になります。
減価償却が取れても、支出の方が上回ってしまうことがあります。
減価償却は、保有している場合に経費となりますが、売却した場合には、利益となり
ます。
保有と売却でオモテウラの関係になっているということです。
減価償却の効果は、税金の繰り延べ(先送り)でしかないことは覚えておきましょう。