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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第435回】ファイナンシャル・プランナー
駒﨑 竜が斬る!②

『賃貸オーナー向けの火災保険について』

こんにちは。ファイナンシャル・プランナーの駒崎です。
今週のテーマは、
「地震で火事?その損害、地震保険では足りません。」です。

賃貸オーナーの皆さま

「地震保険に入っているから大丈夫」と思っていませんか?
実はそれだけでは、
地震による火災被害には十分に対応できないことをご存じでしょうか。

近年、首都直下型地震や南海トラフ巨大地震などのリスクが高まっており、
その備えとして地震保険に加入している方も多いかと思います。
しかし、火災保険は地震による火災を補償しません。
地震が原因で火災が発生した場合は、
地震保険または特約による補償しか受けられないのです。

◆ 地震火災が危険な理由とは?
内閣府の試算によれば、首都直下型地震が起こった場合、
倒壊による全壊家屋は約17.5万棟、
焼失による全焼家屋は約41.2万棟とされており、
火災による被害の方が深刻と予測されています。

地震直後は次のような理由で火災の被害が拡大しやすくなります。

✔ 道路の損壊や混雑で消防車が到達できない
✔ 消防が同時多発火災に対応しきれない
✔ 隣家からの延焼による被害

つまり、自分の物件が耐震構造で倒壊しなくても、
隣接建物からの延焼によって
焼失するという現実的なリスクがあるのです。

◆ 地震保険では“半分”までしか補償されない
現在の地震保険制度では、
火災保険金額の最大50%までが限度となっています。
例えば、建物の火災保険金額が3,000万円だった場合、
地震保険から支払われるのは最大1,500万円まで。
残りの1,500万円は補償されず、自己負担となってしまいます。

このような「地震による火災全焼」リスクに備えるためには、
地震火災費用特約の付帯が不可欠です。

◆ 地震火災費用特約で、自己負担“ゼロ”も可能に
火災保険では、
以下の2つの地震火災費用特約が用意されています:

【自動付帯型】
保険金額の5%・上限300万円
※すべての契約に自動で付帯されますが、全焼時には不十分です。

【推奨特約】
保険金額の50%・限度額なし
→ 実質的に自己負担をゼロに近づけるために必要な特約です。

たとえば、火災保険金額3,000万円・
地震保険金額1,500万円の物件が、
地震による火災で全焼した場合

地震保険から1,500万円
地震火災費用特約(50%)から1,500万円
= 合計3,000万円 → 全損分を補償可能

これに対し、5%特約だけでは150万円の補填しかされず、
自己負担が1,350万円にもなる試算です。

◆ オーナーの備えは、入居者の安心にもつながる
賃貸経営において、火災発生後の迅速な復旧は、
入居者の生活と信頼を守るうえでも不可欠です。
補償が不十分な場合、修繕の遅れや退去、
空室の長期化といった経営的ダメージが避けられません。

保険料の数千円の違いが、
数千万円の修繕費の明暗を分ける。
それが地震火災費用特約です。

次回(第3回)は、入居者の事故による漏水・賠償リスクと、
それに備える保険特約について詳しく解説します。

ABOUT ME
駒﨑竜
駒﨑 竜(Komazaki Ryu) 経済力コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー エターナルフィナンシャルグループ(株)  代表取締役 エターナルウェルスマネジメント(株) 代表取締役 一種外務員、貸金業務取扱主任者、 二級FP、損害保険大学、生命保険大学 マネーの達人・週刊ダイヤモンド・価格ドットコム・KINZAI・ 不動産日記(税金の手引き)・税の知識(相続贈与)・ 住宅新法(事業資金調達)・住宅ローンアドバイザー通信など、 専門家としての執筆、監修をしている。
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