渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第228回
相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。
Q父に相続が発生し、私が農地を相続することになりました。
農地の納税猶予を受けるためには、農業を継続して行わなければならないと聞きました。
農業の誰かに任せることでも納税猶予は受けられないのでしょうか?
A
1.農地の納税猶予とは
相続税の農地の納税猶予制度は、
被相続人の農業を一定の親族が承継し、
相続した農地で引き続き農業経営を行う場合には、
その農地に係る相続税の大部分について納税が猶予される制度です。
猶予される税金は、相続税評価額で計算した場合の相続税額と、
農業投資価格で計算した相続税額との差額です。
この「農業投資価格」は通常の宅地評価額より大幅に低く設定されています
農家が代替わりする際に農地に高額な相続税が課税されると
農地売却や離農を招きかねないため、
それを防ぐ目的で創設されました。
一定期間営農を継続すれば最終的に
猶予税額の納付が免除されます。
2.農地の納税猶予の要件
納税猶予を受けるには、基本的には、
被相続人が死亡の日まで農業を営んでいた農地を、
その相続人が取得し、
相続税の申告期限までに農業経営を開始し、
その後も引き続き農業経営を行うと認められる場合に認められるものになります。
つまり、相続人が農業を行うことが前提となるのです。
しかし、2009年(平成21年)の税制改正で制度が見直されました。
以前は、相続した農地を第三者に貸し付けてしまうと
営農継続要件を満たせず、猶予が打ち切られて
相続税と利子税を納める必要がありました。
改正後は、一定の要件を満たす形で第三者に
農地を貸し付けても納税猶予を継続できるようになったのです。
(1)特定貸付け(特例貸付け)を利用する方法
特定貸付けとは、相続した農地を、
農地中間管理機構(いわゆる農地バンク)による
集積事業や農地法特例による事業など、
公的制度に基づいて第三者に貸し付けることを指します。
このような、農地中間管理事業や農用地利用集積計画
(利用権設定促進事業)によって農地を貸し付けた場合には、
相続人自身が耕作しなくても農業経営が継続しているとみなされ、
納税猶予が打ち切られません。
(2)営農困難時貸付けを利用する方法
相続人が、高齢・障害・疾病などで自ら営農継続が困難になった場合に限り、
やむを得ず農地を第三者に貸し付けても
(一般の賃貸借による貸付けでも)猶予継続が認められます。
これは特定貸付けが利用できない場合の
救済措置として設けられており、
貸付け後2か月以内に所定の届出書を税務署に提出する必要があります。
3.地区区分による適用の注意点
(1)市街化区域内の農地(例:都市計画区域内の農地。生産緑地など)
市街化区域内の特例農地については、
相続税の申告期限から20年間継続して営農すれば猶予税額が免除されます。
つまり、都市部の農地については、
20年間耕作を続ければその後税が免除され
(仮に20年以内に相続人が死亡した場合も免除)、
以降転用も可能という条件です。
「特定貸付け」は市街化区域外の農地に限るとされており、
市街化区域内の生産緑地などを
第三者に貸しても特定貸付けの猶予継続特例は受けられません。
そのため、都市内農地の場合は原則として
相続人やその家族が自ら耕作を続ける必要があります。
ただし、高齢・障害・疾病などで
自ら営農継続が困難になった場合の営農困難時貸付は可能です。
(2)市街化区域外の農地(例:農業振興地域内の農地)
市街化区域内の農地と異なり、
相続人が亡くなるまで終身にわたって営農継続することが
猶予税額免除の条件です。20年では足りず、
生涯農業を続けて初めて猶予税額が免除される仕組みです。
そして、第三者貸付けによる猶予継続の特例
(特定貸付け)が利用できるのは市街化区域外農地です。
高齢・障害・疾病などで自ら営農継続が困難になった場合の営農困難時貸付も可能です。
4.まとめ
お父様から相続された農地について、
必ずしもご自身で農業を行う必要はありません。
市街化区域外の農地であれば、
農地バンクなどの公的制度を活用して
第三者に貸し付けることで、
納税猶予を継続しながら農地を有効活用することが可能です。
具体的な手続きについては、
税理士などの専門家に相談されることをお勧めします
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