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遺産分割が相続税の申告期限までに間に合わなかった場合のデメリット

渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第231回

相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。

Q父遺産分割協議が相続税の申告期限までに
まとまらない場合には、相続税の計算で不利になると聞きました。
具体的にどのような点で不利になるのでしょうか?

A
1.未分割申告の基本的な手続き
相続税の申告期限(被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内)
までに遺産分割協議がまとまらない場合でも、
申告期限の延長は認められません。

そのため、一旦未分割のまま相続税申告を行う必要があります。
この場合、各相続人は民法の法定相続分に従って
財産を取得したものとみなして相続税を計算し、
申告・納税することになります。

2.未分割申告で適用できない特例とその影響
未分割で申告する最大のデメリットは、
相続税の各種特例が適用できないことです。

(1)配偶者の税額軽減
配偶者が取得した財産のうち、
法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額までは
相続税がかかりません。

しかし、相続税法第19条の2第2項により、
申告期限までに分割されていない財産については、
この軽減措置の計算から除外されてしまいます。
配偶者が実際には多額の財産を取得する予定であっても、
未分割の段階では一切の軽減を受けることができないのです。

(2)小規模宅地の減額
小規模宅地の減額とは、
被相続人の居住用宅地や事業用宅地について
評価額を最大80%減額できる
(賃貸用の宅地については50%減額)特例です。

租税特別措置法第69条の4第4項本文において
「申告期限までに共同相続人又は包括受遺者によって
分割されていない特例対象宅地等については、特例を適用しない」
と明記されています。

(3)納税猶予制度
農地等の相続税納税猶予制度は、
農業を継続することを条件に相続税の納税を猶予する制度ですが、
申告期限までに遺産分割が整わなければ、
その後分割が確定しても適用を受けることができません。

同じく山林の納税猶予や美術品の納税猶予、
そして事業承継における非上場株式等の納税猶予制度も、
未分割申告では適用できません。

これらの制度は、特定の相続人が財産を承継し
継続的に管理・利用することが前提となっているため、
承継者が確定していない未分割の状態では
要件を満たすことができないのです。

(4)物納制度
物納は金銭での納付が困難な場合に、
相続財産そのもので相続税を納付する制度ですが、
財産の帰属が定まっていない未分割状態では、
どの相続人がどの財産を物納に充てるか特定できないため、
制度の利用が認められていません。

(5)非上場株式の配当還元方式による評価
非上場株式の評価方法を判定する際に、
株式取得後の議決権の割合に応じて、
原則的評価方式か、配当還元方式かに選択されます。

しかし、未分割の非上場株式の評価方法については、
各相続人が未分割株式の全部を取得したものとみなして
議決権割合を算定することになっています。

法定相続分で分割すれば少数株主として
配当還元方式で低く評価できる場合でも、
未分割申告時には、未分割株式の全株数が議決権数として
カウントされるため、原則的評価方式による
高い評価額となる可能性があります。

2.まとめ
未分割申告による税負担の増加は数千万円になることがあります。

相続税対策は節税だけでなく「分割対策」も同じくらい重要なのです。
どれだけ完璧な節税プランを立てても、
遺産分割で揉めれば、
その効果は大きく損なわれてしまうことは
ぜひ知っておいてください。

なお、未分割で申告した場合でも「申告期限後3年以内の分割見込書」を
提出しておけば、分割確定後に配偶者の税額軽減や
小規模宅地の特例を遡って適用し、納めすぎた税金の還付を受けることができます。

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渡邊浩滋
大家さん専門税理士事務所、渡邊浩滋総合事務所代表。当サイトを運営する大家さん専門税理士ネットワーク「Knees(ニーズ)」代表。 自らも両親から引き継いだアパートを経営する大家であり、「全国の困っている大家さんを助けたい」という夢を叶えるべく日々奔走している。 全国でのセミナー出演、コラム執筆等多数。
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