渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第254回
相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。
Q不動産を所有する同族会社を持っています。
非上場株式の相続税評価について、
国税庁の有識者会議で見直しが
議論されていると聞きました。
どのようなスキームが問題視されているのでしょうか?
A
2026年4月20日に、
国税庁において「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の
第1回が開催されました。
この有識者会議では、
非上場株式の評価方式の見直しに加えて、
評価額を意図的に圧縮する租税回避スキームへの
対応が議論されているのです。
今回は、有識者会議の資料で具体的に問題視された
スキームの一つ、「種類株式(無議決権株式)を
用いた配当還元方式の濫用」について解説します。
1.非上場株式の評価方法とは
非上場株式の評価には、株式を取得する人によって、
2つの方式に分かれます。
(1)原則的評価方式(同族株主が取得する場合)
会社の経営支配権を持つ株主が取得する場合に適用されます。
「類似業種比準方式」「純資産価額方式」
「併用方式」のいずれかで評価することになっています。
(2)特例的評価方式(少数株主が取得する場合)
会社の経営にほとんど関わらない少数株主が
取得する場合に適用されます。
「配当還元方式」で評価します。
配当還元方式は、原則的評価方式に比べて、
評価額が大きく下がる特徴があります。
つまり、株主が「同族株主」と判定されるか
「少数株主」と判定されるかで、
株価は大きく変わってくる、ということです。
2.問題視されているスキーム
次のような会社を例に考えてみましょう。
・純資産:10億円
・発行済株式:1,000株
・1株あたり純資産価額:100万円
・1株あたり類似業種比準価額:30万円
・1株あたり配当還元価額:5万円
【スキーム前の株主構成(全て議決権付きの普通株式)】
・父(創業者・社長):850株(議決権85%)
・子1(後継者):130株(議決権13%)
・子2:20株(議決権2%)
子2の子(孫)は、まだ株主ではありません。
この状態では、孫が株式を取得しても
「同族株主」となるため、
原則的評価方式で評価されることになります。
【スキームの実行】
①父が保有する850株を、すべて無議決権株式に転換する
②子2が、自分の20株のうち5株を、孫に贈与する
【スキーム後の株主構成】
・父:850株(無議決権)→ 議決権ゼロ
・子1:130株(議決権付き)
・子2:15株(議決権付き)
・孫:5株(議決権付き)
議決権を持つ株式の総数は150株となり、
議決権割合は次のとおりになります。
・子1:86.7%
・子2:10%
・孫:3.3%
ここで、孫について見てみましょう。
孫の議決権は3.3%で、
5%未満になっています。
さらに、孫の親族(父・子2・自分)の議決権の合計は
13.3%で、25%未満となります。
これにより、孫は「中心的な同族株主」に該当しなくなり、
配当還元方式を適用できることになるのです。
3.インパクトはどれくらいか?
このスキームの本当の効果は、
その後、父に相続が発生した時に出てきます。
父の死亡時、
無議決権株式850株が孫に相続されたとしましょう。
孫はそのまま配当還元方式を使えるため、
評価額は次のとおりです。
850株 × 5万円 = 4,250万円
もし、同じ850株を子1(後継者)が相続していた場合、
原則的評価方式
(仮に類似業種比準と純資産の併用で1株65万円)に
なります。
850株 × 65万円 = 5億5,250万円
その差は、約5億円。
評価額が10分の1以下に圧縮できてしまうということです。
しかも、有識者会議の資料では
「将来的に普通株式への転換も否定できない」
と指摘されています。
配当還元方式で相続した後、
無議決権株式を普通株式に戻して、
議決権を取り戻すことも考えられるのです。
4.今後の見直しの方向性
このようなスキームに対して、
これまで税務当局は、
財産評価基本通達6項
(この通達の定めにより難い場合の評価)に基づき、
個別に否認してきました。
ただし、納税者の予見可能性が損なわれる
という批判もあります。
そこで、有識者会議では、
評価制度自体の見直しが議論されており、
「評価額の恣意性・操作性の排除」が
基本的な観点の一つとされています。
種類株式を用いたスキームは、
まさに規制強化の対象となる可能性が高いと言えます。
5.まとめ
非上場株式の評価については、
有識者会議で見直しが議論されており、
今後評価通達の改正が進む可能性が高い状況です。
種類株式やグループ法人税制を活用した節税スキームは、
規制強化の対象となる可能性が高いと言えます。
行き過ぎたスキームに手を出さず、
シンプルで合理的な対策をしておくことが重要です。
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