賃料不払いによる解除について ③
こんにちは。弁護士の関です。
今回のコラムでは、数回にわたり『賃料不払いによる解除について』の判例をお送りいたします。
賃料不払いによる解除についての判例 その3
●賃料不払い約2か月分で解除を認めた事例
今回は、解除をした時点で賃料不払いが約2か月分であったケースで、解除を認めた裁判例をご紹介します。
平成14年4月5日の東京地裁の裁判例です。
Aが所有する物件を、原告(賃借人兼転貸人)が被告(転借人)に転貸し、原告がこの転貸借契約を解除した事案です。
もともと転貸の賃料は月額300万円でしたが、途中から賃料を月額235万円に減額していました。
その後被告は賃料の不払いを続け、原告と被告は、平成12年11月24日、同年10月末日までの未払賃料が1027万2500円であることを確認するとともに、被告が同年12月25日までにこれを支払う旨の合意をしました。しかし、被告は支払わず、原告と被告は、平成13年1月9日、同日時点で未払賃料が1274万円であることを確認するとともに、被告が同月30日までに未払賃料全額を支払うこととし、これを怠ったときは、原告が転貸借契約を催告を要せず即時に解除することができる旨の合意をしました。
しかし、被告は一部しか支払わなかったため、原告は、同年2月15日到達の書面により被告に対し、転貸借契約を解除する旨の意思表示をしました。
この解除の前日時点の未払賃料は合計523万3750円であり、賃料の約2か月分だったという事案です。
被告は、解除した時点では、賃料不払いが約2か月分にすぎなかったなどと主張し、信頼関係を破壊するに足りない特段の事情があるとして争いました。
しかし、裁判所は次のような判示をして解除を認めました。
・本件解除の時点における未払賃料は523万3750円であったが、被告は、それ以前において、平成12年11月24日には同年10月末日までの未払賃料が1027万2500円であることを認めた上でその遅滞の解消を約し、さらに平成13年1月9日には同日時点での未払賃料が1274万円であることを認めた上でその遅滞の解消を約しているにもかかわらず、結局その履行を怠ったものである。
・ところで、賃料支払義務は賃借人の債務の中で最も重要なものであることはいうまでもないが、特に本件のように賃貸人が他から目的建物を賃借した上で転貸している場合には、原告としても自己に対する賃貸人に賃料を支払わなければならないので、転借人である被告から約定どおりに賃料の支払を受ける必要性が極めて高いと考えられ、この賃料支払義務を怠ったときの背信性は強いとみなければならない。
・ところが、被告は、従前2回にわたって4か月分から5か月分に及ぶ遅滞の解消を約しているにもかかわらず、結局2か月分を超える賃料の遅滞を生じさせているのであるから、この義務を怠った程度としても軽微なものということはできない。
●この事例からいえること
賃料不払いが2か月分しかない場合、一般的にはまだ解除は難しいだろうと考えることが多いと思います。
しかし、この事例から、過去にも賃料不払いが継続していたり、それに対して、大家さんが支払いを何度も催告し、支払いを猶予してあげたにもかかわらずその約束を反故にされたという経過があるなど、ほかにも信頼関係の破壊を肯定するような事情があれば、解除の時点では賃料不払いが2か月分であったとしても、解除が認められる場合があるということです。
解除が認められるかは本当にケースバイケースではありますが、こまめに支払いを催告し、そのことを証拠化しておくことは最低限やっておくとよいでしょう。