大家業にとって最も心配なことと言ってもいいのが「家賃の滞納」。滞納されると困るのは言うまでもありません。今回はこの経理上・税務上の処理についてお話します。
1.滞納されても「収益」
(1)入金がなくても「売上」
ビジネスの世界では、商品の注文を受けた時点で売上を計上するのが一般的です。これは入金がなくても売買契約が成立したからで、会計や税の世界では、これを発生主義と言います。現金商売の場合は売上の計上と入金が同時ですから何の問題もないのですが、ビジネス慣行では売上が先になり、入金はその後になるのが一般的です。つまり、売上が確定した場合には未入金なので、経理上はその金額を「売掛金」として計上します。これが例えば一ヶ月後に入金となって売上代金が回収されるわけです。
(2)契約時点で
不動産賃貸業では、普通は入居時に賃貸契約書が交わされますので、この契約書に記載されている「家賃の支払い日」に売上を計上することになります。つまり、入金があろうとなかろうと、契約書で交わした日で収入としなければならない点に注意しなければなりません。従って家賃の滞納があると、お金が入ってきていないのに収入にしなければならない、というおかしなことになります。
2.滞納が困る理由
(1)税金が発生する
受取家賃はすでに収入すなわち利益になっているのですから、これに税金がかかるというのは当然ということになります。もちろん経費を差し引いた残りに対して、ではありますが、それでもキャッシュフロー上良くないのは言うまでもありません。理不尽な話ですが、そういうルールになっているので仕方がありません。
(2)貸し倒れ処理が困難
一般的なビジネスでは、回収できなくなった売掛金などは貸し倒れ処理をして経費にすることができます。もちろん、これにもいろいろな条件はあるのですが、大家業の場合はそう簡単に貸し倒れにできないので注意が必要です。基本的に貸倒処理が認められるのは「事業的規模」(5棟10室基準参照)の場合にのみ、回収不能となった年分に経費にすることができます。事業的規模に無い場合は、収入に計上した年分にまでさかのぼって所得計算をやり直さなければなりません(税務上は「更正の請求」という処理をします)。「滞納になって回収できないから損失にする」とすぐにできないのですから、非常に面倒なことになります。
3.まとめ
今は家賃保証会社を入れる場合も多いので、滞納の心配も減ってきてはいます。しかし、それでも家賃の滞納が発生すると経理処理上はもちろん、キャッシュフロー上も大家業の経営にマイナスになります。日頃から注意して行きましょう。