大家業に必ずつきものなのが修繕費。今回はその判定について説明します。
◎判定基準が重要
(1)キーワードは「原状回復」
修繕費とは、基本的に「通常の維持管理や修理のために支出されるもの」と定義されています。
では修理であればなんでも経費にできるか、というとそうでないところがやっかいな問題です。税務上は、修理名目で支出しても、以前よりも性能が向上したり価値が上がったりしたものは「資本的支出」だから経費として認めない、という扱いがある点に注意が必要です。
「資本的支出」というのは「資産の価値を増加させる支出」という意味で、資本的支出となると一括で経費にはできず、建物や備品のように減価償却しなければならなくなります。
大家業でいえば、以下の支出は「修繕費」とならないとされているので要注意です。
・建物の避難階段の取付けや監視カメラの設置など、物理的に付け加えた支出
・事務所用から店舗へ、などといった用途変更のための模様替え、改造や改装のために使った費用
・外壁をすっかり取替えたり壊れたLEDを交換する場合、以前よりも性能のいいものに取り替えた場合で「通常の取替えの金額を超える部分の金額」
費用
(2)金額基準
とはいえ、この「資本的支出」の判断は非常にあいまいです。そこで一般には以下のような金額基準を用いて修繕費になるかどうかを判断します。
・おおむね3年以内の期間を周期として行われる修理、改良の場合、または金額が20万円未満の場合
・一つの修理、改良などの金額のうちに資本的支出か修繕費か明らかでない金額がある場合で、その金額が60万円未満のときまたはその資産の前年末の取得価額のおおむね10%相当額以下であるとき
この基準からすると、大規模修繕などは全額経費にすることができなくなります。そこで実務上は、原状回復までの支出をさまざまな方法で算出して修繕費とし、これを超える部分は資産に計上します。
(3)自宅部分はダメ
なお、他の支出でも当然のことですが、経費にできるのは事業用部分のみで自宅部分は経費になりません。自宅部分の金額は「事業主貸」として処理しなければなりませんのでご注意ください。