大家業としてはあまり考えたくないことですが、家賃の滞納は大家業にはつきものの悩みの一つです。今回はその経理処理について説明します。
1.家賃の計上時期に注意
(1)未回収でも収益計上
大家業の家賃については、これまでも何度か述べている通り、権利が発生した時点で収益にカウントされてしまいます。言うまでもありませんがこの点に注意しなければなりません。
ただし、現金主義会計の届出をしている場合はその限りではありません。現金主義会計は青色申告者であって前々年分の不動産所得や事業所得の合計額が300万円以下の者で、適用を受ける年の3月15日までに届出書を税務署に提出しなければならない点に注意が必要です。
(2)厳密には前受・戻入
大家から見て、通常の家賃は前家賃つまり翌月の分を前月末までに振り込んでもらうものです。従って、今年の1月から12月までの1年間に入ってくる家賃は、今年の2月から来年の1月の家賃ということになります。そこで厳密には今年の12月に入った家賃は翌年に繰越し、前年の12月に入った家賃を今年の1月分として計上しなければなりません。
従って、現金主義を採用していない場合には、帳簿上(貸借対照表上)に「未収金」「未収家賃」「売掛金」や、「前受金」「前受家賃」などといった科目が載ってないとおかしいことになります。これらが無いと税務署や金融機関などにキチンと計算していないと思われる可能性がありますから、注意が必要です。
2.未回収を処分する方法
(1)損金にするのは大変
非常に冷たい言い方ですが、税務上、家賃を回収できないのは大家の責任であるとされます。従って、未回収家賃は回収するまで未収入金として帳簿に残ってしまいます。そのリスク対応は税務と関係なく、いわば大家業としての本質に関わってきます。
(2)リスクに備える方法
家賃の未回収分については、相手が破産したりして回収が不可能であることが確実な場合などは、「貸倒損失」という形で損金処理(経費)にすることができます。しかし税務上その条件は厳しく、単に回収できないから、といったような理由では認められません。
そのほかには「貸倒引当金」を設定することで未回収リスクを補填できるようになっています。しかしこれも滞納全額に対し引当金を設定することはできず、個別に相手の内容を検討して50%までの計上になります。また、滞納額だけでなく他の未回収分(12月末時点での未回収つまり1月入金分)も含めた金額の5.5%まで「貸倒引当金」を計上することも可能です。しかしこれにも条件があり、青色申告でなおかつ事業的規模(いわゆる5棟10室基準を満たすもの)が求められます。
この様な点を考えると、滞納の心配が無いサブリースや家賃保証会社を利用するという選択肢もありかと思います。これらを選択した場合は、支払う手数料は当然に経費になります。