平成30年に成年年齢を20歳から18歳に引き下げる等の民法改正がなされました。成年年齢の見直しは明治9年以来、140年ぶりであり、若年層の社会参加が促されることにより様々な変化が生じることが予想されます。
本稿では、相続税の税額控除の1つである未成年者控除について詳細を確認しつつ、民法改正による影響についても確認をしていきます。
1. 適用要件
未成年者控除が受けられるのは次のすべてに当てはまる者です。
⑴ 相続又は遺贈により財産を取得した時に日本国内に住所がある者(一定の者に限るものとされ、一定の日本国内に住所を有しないものを含みます。)
⑵ 相続又は遺贈により財産を取得した時に20歳未満である者
⑶ 相続又は遺贈により財産を取得した者が法定相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人をいいます。)であること
2. 税額控除額
未成年者控除額は、その未成年者が満20歳になるまでの年数1年につき10万円で計算した額とされています。これは、未成年の法定相続人が成年に達するまでに必要となる養育費は被相続人の遺産から支出されるべきと考えられていること等によります。
また、年数の計算に当たり、1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算します。
法定相続人の年齢が16歳11ヶ月の場合、11ヶ月を切り捨て16歳で計算します。
よって、20歳までの年数は4年になります。したがって、未成年者控除額は、10万円×4年で40万円となります。
算式にすると
100,000円×(20歳-16歳(1年未満切捨))=400,000円 となります。
なお、その未成年者である法定相続人が今回の相続以前にも未成年者控除の適用を受けている場合は、控除額が制限されることがありますので、注意を要します。
3. 扶養義務者からの控除
その未成年者に係る相続税額から未成年者控除の額を控除してもまだ控除しきれない金額がある場合(その未成年者の相続税額<未成年者控除額)は、その控除し切れない部分の金額については、その未成年者の扶養義務者の相続税額から控除することができることとされています。
これは、未成年者控除の制度趣旨が成年までの養育費分の税負担軽減にあることから、その未成年者の養育費を支弁する扶養義務者から控除することで目的を達成することができるからです。
4. 民法改正による影響
民法改正により2022年(令和4年)4月1日より成年年齢の引き上げを定めた民法が施行されることとなります。これにより、未成年者控除を適用する上での年齢について、上記に記載をした20歳とされている部分は、18歳に変更がされることとなります。
よって、成年年齢の引き下げを受け、相続税法についても民法改正に歩調を合わせて「(原文ママ)平成34年4月1日以後に相続又は遺贈(略)により取得する財産に係る相続税について適用」とされています。
この他、年齢を要件とされる規定についても同様に変更がされることとなっています(相続時精算課税の選択等)。
まとめ
民法改正による影響が表れている規定の一つとしてご紹介をしました。
未成年者控除以外にも年齢要件のある規定には影響がありますので、適用関係にご注意ください。