相続税の納付には「連帯納付義務制度」が設けられています。他の税金では殆どお目にかかることはありませんが、計算の結果、自分が支払うべき相続税額を納付期限までに納付を完了していても「他の相続人等のうちに相続税を納めることができない者」がいる場合は、その他の相続人等が納めるべき相続税額を負担しなければならないことがあります。
かなり理不尽な制度とは思いますが、税務署から「相続税の連帯納付義務のお知らせ」が届いたときに慌てることがないように・・・本稿では、連帯納付義務と連帯納付義務が生じないようにするための注意点についてまとめていきます。
1. 連帯納付義務制度とは
同一の被相続人から相続などにより財産を取得した全ての者は、その取得した財産に係る相続税について、互いに連帯納付の責めに任ずるとされています。
よって、相続などにより財産を取得した者は全員がお互いの相続税の納税について連帯責任があるということになりますので、1人でも相続税を支払わない者がいれば他の相続人が連帯納付義務を負わされることになります。
2. 連帯納付義務の対象者
「同一の被相続人から相続などにより財産を取得した全ての者」とされていることから相続などにより財産を取得した者の「全員」が対象者(連帯納付義務を負う)となります。
この「相続など」には遺贈も含まれていることから、遺言により財産を取得した者や相続又は遺贈により財産を取得していなくても相続時精算課税により被相続人から財産の贈与を受けた者も対象者となります。
3. 連帯納付義務の限度額
連帯納付義務があるとはいえ、まずは本来納税すべき相続人等から取り立てを行うこととなるため、そうそうには連帯納付義務が生じることはないかも知れませんが、その相続人等が取得した財産を納税前に使い果たしてしまったような場合などは、連帯納付義務が生じることとなります。
しかし、これは無制限に生じるものではなく「被相続人から相続や遺贈により受けた利益相当額」を限度として「全員」で平等に負担をすることとなります。
4. 連帯納付義務が免除される場合
相続税の申告期限から5年経過等すれば、この連帯納付義務が免除されます。
5. 連帯納付義務が生じないように・・・・やっておくべきこと
4.にあるように申告期限から5年経過等するまでは連帯納付の通知がある可能性がありますので、以下の点などを意識しておく必要があるでしょう。
・遺産分割時に相続人全員が納税できるように分割財産を調整する
(具体的には現金や預金をそれぞれの納税額分は取得できるようにする。)
・相続人等が各自で連絡を密にし、納税について相互確認をする
(場合によっては、資金の調達方法などの相談に乗る。)
因みに、資金調達の相談に乗り結果として納税資金の贈与を行った場合は、贈与税の申告が必要となるとともに、その贈与税の納税がされないと納税資金の贈与をしたあなたに贈与税の連帯納付義務が生じることとなります。つまり、納税資金の贈与とこれに係る贈与税の双方を負担する必要が生じることとなってしまいます。
まとめ
連帯納付義務には、相続税のみならず贈与税についてもあります。