相続税対策としての養子縁組 ②
弁護士の関です。こんにちは。
平成29年1月31日、相続税対策のための養子縁組が有効か否かについて判断した最高裁判決がでました。
前回、養子縁組とは、というお話をしましたので今回はこの最高裁判決について解説したいと思います。
相続税対策と養子縁組に関する最高裁判決
●平成29年1月31日最高裁判決の事案
それでは最高裁判決の内容を解説したいと思いますが、まず、前提事実を少し詳しくご紹介します。
〔登場人物〕
・父親A → Yの養父
昭和6年生。昭和62年ころまで衆議院議員の秘書として働き、福島県安達郡東和町の町長などを務めた人物。平成24年5月8日に養子縁組の届出提出。
・母親B
・長女X1
・二女X2
・長男C(X1・X2の弟)
クリニックの院長を務める医師
・長男Cの息子Y → Aの養子
X1とX2が、Yに対し、YとAとの養子縁組が無効であるとして争った事案。
Yは未成年者であり、実質的には、X1・X2とC(及びその妻)との姉弟間の争い。
〔時系列〕
平成22年3月11日
父親Aが世田谷区喜多見に所有していた不動産を母親Bと長男Cに相続させることなどを内容とする公正証書遺言を作成
(父親Aは他にも不動産を所有していた)
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平成22年6月22日
長男Cが39歳で婚姻
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平成22年6月28日
母親Bが世田谷区喜多見の不動産のうち、建物の共有持分を長男Cに相続させることなどを内容とする公正証書遺言を作成
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平成23年
長男Cの第一子Yが生まれる
長男Cは、息子Yの出生後、税理士から息子Yを父親Aの養子とした場合の節税メリットの説明を受けた
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平成23年12月末
父親Aが長女X1に対し、長男Cの税理士から養子縁組を持ちかけられて困っている、ずっと断っているのに何度も電話があると話した
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平成24年2月7日
父親Aは、自宅を訪れた税理士の職員から、孫のYと養子縁組をすることの節税メリットの説明を受けた
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平成24年3月20日
母親Bが死亡
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平成24年3月22日
父親Aが「現在の遺言書は無効です」という自筆証書遺言を作成
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平成24年4月24日
父親Aは、長男C、その妻及び孫Yとともに自宅を訪れた税理士及びその職員から、養子縁組の節税メリットと養子縁組の手続の説明を受けた
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平成24年4月24日か、5月3日のいずれか
父親Aが、孫Yとの養子縁組の届出に署名押印。
なお、Yは未成年(幼児)であり、長男Cとその妻が親権者として署名押印
(日付は不明)。
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平成24年5月8日
父親Aと孫Yの養子縁組の届出を提出。
届出書の証人は父親Aの弟夫婦。
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平成24年6月ころ
長男Cが父親Aの女性問題を追及したことなどをきっかけに、二人の関係が悪化
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平成24年7月ころ
長男Cと長女X1・二女X2との関係が、母親Bの形見分けなどに関連して、一層悪化
(母親Bの生前から関係は悪い)
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平成24年7月14日
父親Aが「息子Cの私に対する態度も含め精神的に参っています。私の財産は一切今後渡さないことに決めました」と記載した文書を作成
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平成24年9月ころ
長女X1が養子縁組の事実を知る
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平成24年10月12日
養父Aが、養子Yの離縁届を提出。
ただし、Yの法定代理人親権者欄の署名押印は二女X2が作成
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平成24年11月22日
父親Aが、全ての財産をX1とX2に相続させ、連帯保証人として負担する債務を長男Cに負担させる内容の公正証書遺言を作成
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平成25年2月ころ
養子Yが、養父Aに対し、離縁無効確認請求訴訟を提起
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平成25年6月10日
父親Aが死亡
(上記訴訟は検察官が受継)
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平成26年3月10日
上記離縁が無効であることを確認する判決
(養子Yの勝訴判決)
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その後、長女X1・X2が、養子Yに対し、養子縁組無効請求訴訟(本件)を提起
時系列まででかなり長くなってしまいましたので、詳しい解説は次回からしていきます。