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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第六十九回】
不動産鑑定士×一級建築士 田口 陽一が斬る!②

~時価~

こんにちは!

一級建築士・不動産鑑定士の田口です。

先週は利回りの罠についてお送りしました。

今週は、「時価」について改めて考えてみたいと思います。

ところで皆さん、時価は一つに決まると思いますか?

理論的には決まるそうなのですが・・・

でも実務的に考えるとそうとも限りません。

古くて新しいテーマです。

もちろん、地価公示、路線価、実勢価格、固定資産税評価額、鑑定評価額といった各種評額だけでもたくさんあります。

ただ、今回お伝えしたいことはより実務的実際的なこと。

例えば、保有し続ける分には支障のない境界確認未了の土地。

しかし売却するには、境界確認無しでは、買い手がいない、または安くなる。私道に接道た土地。

住み続けるには問題ない。でも、売却となると私道の通行権やインフラの維持管理等で課題があり値段がつかない。                              これって、保有価値と売却価値の差。

時価といっても、差がでてきます。
結構売主さんに驚かれてしまうケースです。
こんなこともあります。

税務上の評価がついている土地。例えば、相続税算定上の財産評価は高い評価額の借地権。

しかし実際の売却価値としては路線価図の借地権割合にほど遠い場合も多い。

また、評価額はついているのに、物納するには境界確定・越境物処理などの条件が満たせず実質的に金銭価値が低い物件。

これって、税務上の評価価値と売却価値に差が出ているということ。
こんな初歩的な話もあります。
売却するには物件的には全く問題ない不動産。
でも相続登記をやっていない。

相続登記には法定相続人全員の合意(遺産分割合意書作成+印鑑証明取得)が必要ですら、それが揃う見込みがない。あるいは長期化しそう。

これで売却が遅れて困ったとしても、権利関係や資産管理の面で、少し落ち度があったと 言えるでしょう。色々と例を挙げてみました。

場合によっては、資金繰りに多大な影響があったりしますから、これって大問題なんでよ。不動産は額が大きいですからね。

ですから、将来売却可能性が高い物件ほど、売却できる条件を満たしているのか、チェックすることが大事です。

売却可能性が低くても、実際的な交換価値と、相続税等の税務上の評価額とに乖離が   ないか、チェックし必要な手立てを事前に打っておくことが大事だと思いますよ。

また来週!

 

ABOUT ME
田口陽一
明治大学理工学部建築学科卒業。一級建築士、不動産鑑定士、宅地建 物取引士、マンション管理士。東京建物株式会社にて、不動産鑑定評 価、都市再開発、オフィスビル売買・運営、SPCスキームを活用した 不動産事業等、理論・実務の両面から不動産業務を経験し実績を残す。 不動産ソリューションは、実践的経験が何より重要であるばかりでな く、建築・税・法務・金融・理論的評価・現実の売買等々、複合的領 域にわたることから、常に複眼思考でベストな解決策を構築している。 鑑定評価や売買のみならず、バランス重視のハイブリッドなアドバイ ザリーを得意とする。
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