大家さんの相続を考える! ②
こんにちわ。
保険×不動産マイスター 津曲(つまがり) 巖(いわお)より、お届けいたします。
前回は、改正民法のうち『配偶者居住権』について考察してきました。
メリットももちろんありますが、『遺留分』を意識した時に、『居住権』の 評価が大いに問題になってくることを肝に銘じておきましょう。
さて、今週は、『配偶者への自宅の生前贈与』と
『預貯金の仮払い制度』についてみていきましょう。
●配偶者への『自宅の生前贈与』のとは?
いわゆる税法上の「おしどり贈与」と異なり、『自宅の生前贈与』は、 「婚姻期間20年以上の夫婦間で「現物」である「自宅」を生前贈与できるという 制度です。
いわゆる「おしどり贈与」では、相続発生時に「生前贈与」分について 『特別受益』として「財産の持ち戻し」が必要でした。 このため、「自宅」は確保できても「現金」はその分減るということが起こっていました。
残された配偶者の「老後生活」の安定のためには『住処』と『現金(生活資金)』の確保が両輪です。
そのため、今回の改正で「現物」の自宅を生前贈与し、これを原則として「特別受益」から除外する規定がなされました。
一気に、『住処』と『現金(生活資金)』を得る道筋が立ったということでは
明るい材料ですね。
また、この生前贈与の対象として『配偶者居住権』も含まれることとなっています。
その評価方法は未だ明確に示されていないので十分な注意が必要です。
●『預貯金の仮払い制度』の創設
平成28年12月19日の最高裁判所大法廷での決定を踏まえての制度ととらえた方が
分かり易いですね。
決定以前は、「預貯金」について遺産分割で争いがあった場合は、 「自動的に法定相続分通り」となり「遺産分割、審判」の対象とならないとされて いました。
しかし大法廷の決定を受け、「預貯金」も「遺産分割、審判」の対象となってしまうと実際の相続の現場では「葬式」も出せない、たちまち家族の生活費すら引き出せない状況が 起こりえます。
これを補う形での「預貯金の仮払い制度」といえます。
内容は、
①「預貯金金額」(口座ごと)×1/3×法定相続分
かつ
②「標準的な葬祭費用や生活費を考慮して金融機関ごとに定める金額」
となります。
①では、「口座ごと」という条件があり、複数の金融機関に口座があればそれごとに ります。
②では、「金融機関ごとに定める金額」とあり、その金額がどの程度かが気にな
ります。
複数の金融機関に尋ねてみましたが明確な回答は現在のところいただけませんでしたが、 おおよそ150万円程度かと思われます。
これも本年7月12日施行されたので各金融機関に確認されることをお薦めします。