「梅雨の前にしておきたい、建物の点検ポイント」④
皆さんこんにちは!
今月担当の不動産鑑定士・住宅診断士の皆川聡です。
前回までの3回については、住宅診断的な視点から、建物のチェックポイントをお伝え 致しました。
住宅診断を活用できる場面は、維持管理や売買のときだけではなく、
鑑定評価においても活用することにより、効果が期待できます。
今回は、
①住宅診断を活用し鑑定評価によって効果が得られた適用例
②鑑定評価を活用し節税効果が得られた適用例
について、抜粋してお伝え致します。
住宅診断を活用した鑑定評価の適用例において、適切な修繕を行っている建物に係る 融資期間延長や融資許容額増大という効果を発揮するときに適用できます。
このことは、私が以前から申し上げているところですので、今回は割愛致しますが、 修繕履歴が大切ということだけは、念のためお伝えします。
1.住宅診断を活用し鑑定評価によって 効果が得られた適用例
住宅診断を活用して鑑定評価をする場合は、確かにプラス要因的な場面が多いのですが、 マイナス的な要因の場合もあります。
それは、低い評価が必要となる場合で、特に、財産分与や遺留分減殺請求等の訴訟における場合に、適正に評価している鑑定結果をより斟酌していただけるという効果がありました。
このようなマイナス的なことでのご依頼の場合、結構な割合で、築浅物件でも施工不良や 地盤問題からくる、クラック、雨漏れや水漏れ、カビの発生などが生じている場合が意外にも多いです。
このケースでは、住宅診断を行うことにより、緊急的に発生する修繕費用相当額及び市場性としての土地建物一体としての減価を考慮して、不動産価値の減額がなされ、低い評価額を提示でき、適正に評価している鑑定結果をより斟酌していただけることがありました。
また、ちょっと違った視点で、あくまで私見ですが、そのような建物環境が、日常生活に 与える影響も、一理あるのかとも思われます。
2.鑑定評価を活用し節税効果が得られた適用例
鑑定評価を活用した節税例として、一つ、今回は最近多い相続時における傾斜地の評価に ついて、記載します。
相続税の申告では、土地の評価は、原則的には路線価方式がとられてい
ますが、
【路線価方式による 評価 >「時価」】
という逆転現象が起きている場合に、端的に言うと、時価算定の際に鑑定評価が活用できます。ここでは長くなってしまいますので割愛しますが、平成4年の国税庁の事務連絡を ご参照下さい。
ケースとしては、対象地が傾斜地で、それ以外の近隣はほぼ宅地造成されており、 その場合、対象地の前面路線価は、宅地造成されている土地を前提に付されています。
対象地は、宅地造成をしないと近隣と同価値にはなりませんので、造成費用を考慮する必要が生じます。
ということは、鑑定評価を活用することにより、対象地の時価は、近隣の土地評価よりも 造成費用分の減価ができ、節税効果が期待できます。
また、ちょっと違ったケースとして、古い擁壁の土地で、再建築する際
には、新しい擁壁を作らなければならない場合があります。
この場合も鑑定評価を活用することにより、旧擁壁の取壊費用や新設擁壁設置費用を 近隣土地より減額し、節税効果が期待できます。
今回は、
①住宅診断を活用した鑑定評価によって効果が得られた例
②節税での鑑定評価の活用例
について、抜粋してお伝え致しました。
いずれにしましても合理的な理由が必要となります。その場合には、
鑑定評価のご活用を推奨しております。
鑑定評価により採用される確率は高まりますが、その効果は100%ではありません。
ですので、①、②のケースともにリスクは見ておかなければなりません。
但し、常識的に見て、特に②の場合で、路線価方式による評価が、時価
よりも相当に割高と思われる場合には、採用される確率が高まりますので、
専門家へ事前のご相談をいただけますと幸いです。
今回も最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。