~新型コロナウィルスが映し出す未来不動産~
今月号は、一級建築士・不動産鑑定士の田口陽一より、
お届けしています。
新型コロナウィルスが世界規模で猛威を振るうなか、
新型コロナウィルスによりお亡くなりになられた方々に
心からご冥福をお祈り申し上げますとともに、
罹患された方々に心からお見舞いを申し上げます。
日本のみならず世界中で新型コロナウィルス感染が拡大し、
一年を過ぎても終息しませんでした。
社会全体が変容する中、我々の日々の暮らしも様変わりしました。
社会経済全体から、
人と人とのコミュニケーションまで。
広く、根本から、大きな変化です。
日常生活の変化や人々の意識の変化は、
じりじりと年月をかけて、社会の在り方、そして文化も変えていきます。
不動産への影響も必至でしょう。
不動産は本来、インフラでもあり生活の基盤です。
人々の生活のあり様、経済価値創出のあり方、人が同じ場に集まる意義・・・
こういったことが空間や場所のあり方や価値を決めます。
ではどのように影響があるのか。
これが関心事ですね。
“アフターコロナの不動産はどうなるの??”
“今後の不動産市場はどうなるの??”
100%確実な回答はないでしょう。
あったとしても、そもそもあなたはそれを100%信じることができますか?
●●なら間違いない、●●なら勝ち組、
といった正解を探すような戦略はいよいよ困難となり、
やり方次第では成功したり、かたや失敗したり、
そういう時代になったように感じます。
公約数のような正解を探す旅はもうやめましょう。
こんなときこそ、本質を極めて、行動を起こしましょう。
第3回目の今回。
今後の不動産戦略について
私が考える今後の不動産戦略は、例えば以下のようなものです。
・“時短”を追求。
・空間の“使い分け”や“多様性”に対応。
・“リアル”の価値を具現化し提案する力。
・“ソフト”の不動産運営力を高める。
・都市・交通インフラ等の再開発の胎動をキャッチ。
・不動産と“負動産”の峻別
・“防災性”を追求。
そもそも「空間」や「場」の根源的な価値とは何でしょうか。
また、人々のこれからの生活様式や生産活動や消費活動はどのようなものに変化するでしょうか。
また、当面変化しないことは何でしょうか。
今回のコロナで「場」を使い分ける、あるいは「場」を兼用する、
といったことが見られますね。
また、個人個人によって「多様」であることや、
変化に対応することのできる「フレキシビリティ」が
個人や個別企業にこれまで以上に強く求められる時代になったと感じます。
オフィス市場では、
「オフィスに出勤する意味」
「出勤したくなるオフィス環境」
「多様な働き方に応じたオフィス供給」
が新たな動きとして見られます。
多様性やソフト面に対応することは、
今後の不動産戦略においてキーワードになりそうです。
日本全体については、人口減少や高齢化への対応という大きな課題を抱えているものの、
国家として都市としての価値を高める活動は引き続き停滞することはないでしょう。
都市再開発や交通インフラの整備に着目することは
当然ですが重要です。
また、相続に関して最近ニュースがありましたね。
不動産のいわゆる相続登記が、義務化される方向のようです。
以下ご参考です。
https://nnp.y-ml.com/cs/Daily/4832/966
2021年2月11日 日経新聞
“相続から3年以内に申請しなければ10万円以下の過料を科す。
所有者に連絡がつかない所有者不明土地は全体の2割程度に達し、
土地の有効活用の弊害になっている”
いよいよ、というか、やっと、というか。
不動産実務上も困った問題でしたが、
そもそも、国土の管理、整備、利用の観点からも、
基本の基のような話。
これまで不動産取引が阻害または実務上支障になっていただけでなく、
公共事業や都市再開発の支障にもなっていたわけです。
驚きなのは、
所有者不明土地が
なんとなんと九州に匹敵する!
(「所有者不明土地問題研究会」(座長・増田寛也元総務相)の推計)
これってなぜそうなるの???
そもそも日本は、当然ですが、国土を守る為に、莫大なコストをかけています。
コストだけではありません。
自衛隊員は命を賭して頑張ってくれています。
それなのになんと、九州に匹敵する土地が、
「所有者不明」???
というのは何故???
一つに、相続登記が面倒で負担だ、あるいは必要性を感じない、
といったこともあるでしょう。
さらには、
“負動産”を相続したくないという事情もありそうです。
わざわざ費用と印紙を支払って相続登記をして、
さらに固定資産税や維持管理コストを支払い、
かつ、管理責任も大、かつ、収益を生まないような不動産があったら・・・
それは“負動産”ですよね。
つまり所有者不明土地の問題は、
“負動産”問題と裏腹の関係でもあるわけですね。
今後の不動産戦略において、
価値ある不動産なのか、マイナスの“負動産”なのか、
容赦ない峻別が必要だということでしょう。
そしてさらに・・・
もし、コロナ禍で、大災害に見舞われてしまったら・・・
弱り目に祟り目、などとも言いますが、
ただでさえ、ここ最近の自然災害は、
多発し甚大化している模様です。
次回は防災性について少し掘り下げていきましょう。