『アフターコロナのすまい』
こんにちは。一級建築士の遠田(エンダ)です。
前回は、二拠点居住、多拠点居住という暮らしの変化について紹介しました。
今回は変化していくライフスタイルと、アフターコロナのすまいを考察していきます。
◆この1年で大きく変わったライフスタイル
今まで住まい選びの筆頭条件といえば、「駅からの距離」でしたが、
「広さ」を求める傾向が高まっています。
賃貸物件に求める条件が大きく変わってきていると同時に、
広さや駅からの距離など、これまでの指標となってきた条件だけではない
選び方が広がっているようです。
◆住む場所を選べるという強み
コロナ感染や近年の自然災害の頻発を受け、
今後、多拠点居住する人たちは増えると予想されます。
複数の場所を拠点とすることで、1つの物件には数か月しか居住しないという
状況になる可能性もあります。そういった生活スタイルに応じた
サブスクサービス(一定期間、一定額で利用できる仕組み)が増えています。
住む場所が複数ある状態は、自分や家族の身を守る防御策、
選択できるという心の余裕を持つことができます。
◆いざという時に心強いコミュニティ
賃貸住宅の災害対策として、
入居者同士あるいは入居者と地域住民との交流の機会を設ける
コミュニティ型賃貸住宅が注目されています。子育て支援、
高齢者支援といったコンセプトを持つ賃貸住宅で、
災害対策に直結するものではなくても、交流により共生・共助の関係を構築し、
災害対策に活用できると期待されています。日々の挨拶やコミュニケーションにより、
非常時だけでなく日常的な防犯対策や情報共有に役立ちそうです。
◆物件の持つストーリー性に共感
人々の消費行動において、体験や共感が重視されるようになってきています。
「モノ消費からコト消費へ」という言葉や、
最近では特定の時間や場所で共有する「トキ消費」という言葉も注目されています。
物質的な充足感よりも心の豊かさに重点を置くという傾向で、
さまざまな切り口から共感ニーズに対応しようとする動きがみられます。
個人の趣向が異なる中で、注目を集める物件とはどのようなものでしょうか。
人の気配を感じる方が落ち着くという人は、
入居者間のコミュニケーションを大切にする物件に魅力を感じますし、
ひとりで静かに過ごすプライベート空間に魅力を感じる人もいます。
自分の好きなようにアレンジできて現状回復なしのDIYを前提とした物件もあります。
◆変化し続けるライフスタイルに対応していく
コロナの感染だけでなく、地震や水災・風災などの自然災害の頻発により、
今後どうなるかわからない状況の中で、工夫して生活することが求められます。
同じ場所に留まらない人が増えれば、
一生賃貸住宅に住むという人も増えるかもしれません。
今まで駅から遠くて検討しなかったが、景色の良い場所に住みたい、
広い場所に住みたい、といった要望も出てくるかもしれません。
コミュニティを重視したり、ストーリーを持たせたり、
今までにない切り口でアプローチしてみてはいかがでしょうか。