●合同会社の「社員」について
こんにちは。弁護士の関です。
合同会社の「社員」について、続きを書いていきます。
●所有と経営の一致
株式会社と合同会社の大きな違いは、制度として、
所有と経営が分離しているか、一致しているかにあります。
株式会社では、必須の機関として、株主総会と取締役があり(会社法326条1項)、
取締役が業務執行や代表行為を行うため、所有と経営が分離しています
(株主であるAさんが取締役に選任されれば結果として
所有と経営を一致させることができますが、あくまで機関としては別です)。
これに対し合同会社では、機関を定めることは必須とされておらず、
出資者たる社員がそのまま業務執行をし、かつ、代表行為も行うため、 所有と経営が一致しています。
もっとも後述するように、業務執行や代表行為を行わない社員を決めたり、
定款で社員総会のような会議体を設置することもできます。
●業務執行社員
このように合同会社では、全社員が業務執行を行います (社員=業務執行社員、会社法590条1項)。
社員が二人以上いる場合には、業務は社員の過半数で決定します(同条2項)。
ただし、合同会社の常務は、各社員が単独で行うことができます(同条3項本文)。
なお、合同会社は株式会社より広く定款自治が認められており、
無制限ではありませんが、
定款で自由に内部ルールを設定することができるようになっています。
前述の業務の決定方法も、総社員の同意を要するとするなど、
定款で変更することができます(同条2項)。
また、定款に別段の定めを置くことにより、
社員の中から、業務執行を行う業務執行社員を決めることができます(同法591条)。
これにより業務執行権を有する社員と有しない社員に分かれます。
この業務執行社員が二人以上いる場合には、
業務は、その業務執行社員の過半数で決定します(同条1項)。
この決定方法も定款で変更することができます。
業務執行社員の決め方には次の方法がありす。 ・定款に業務執行社員の氏名又は名称を直接定める。
・定款に業務執行社員の選任方法に関する定めを置き、 その定めに従って業務執行社員を選任する。
このように、基本的に、社員=業務執行社員であるため、
業務執行社員には、株式会社の取締役と異なり、
法令による任期の制限はありません。
従って任期満了による役員変更登記が不要になります。
もっとも、定款で任期を定めることもできます。
なお、株式会社では、法人は株主になることはできますが、
取締役になることはできません。一方で、合同会社では、
法人は社員になることができ、その結果、業務執行社員にもなることができます。
法人が業務執行社員になるときは、現実に業務を執行する自然人の職務執行者を選任する 必要があります(同法598条1項)。
業務執行社員は、株式会社の取締役と同じく、
善管注意義務や忠実義務を負い(同法593条1項、2項)、
また、競業や利益相反取引が制限されています(同法594条、595条)。
競業避止義務や利益相反取引の制限は、株式会社の場合には、
株主総会(取締役会設置会社であれば取締役会、同法356条1項、365条1項)
の承認があれば許されますが、合同会社の場合には、
前者は当該社員以外の社員の全員の承認(同法594条1項)、
後者は当該社員以外の社員の過半数の承認(同法595条1項)が
要件とされています。
また、いずれも定款で別段の定めをすることができます。
●代表社員
合同会社では、業務執行社員が代表行為を行います(同法599条1項)。
業務執行社員が二人以上いる場合には各自が代表します(同条2項)。
つまり、基本的には、社員=業務執行社員=代表社員の関係にあります。
業務執行権を有する社員と有しない社員に分けた場合には、
業務執行社員のみ代表社員になります。
また、業務執行社員が二人以上いる場合には、
次の方法で、業務執行社員の中から代表社員を決めることできます。
業務執行社員ではない社員は代表社員になれません。
・定款に代表社員の氏名又は名称を直接定める。
・定款の定めに従って、業務執行社員の互選によって選定する。
これにより代表権を有する業務執行社員と、
代表権を有しない業務執行社員に分かれます。
以上により、合同会社は、基本的には、所有と経営が一致しており、
社員=業務執行社員=代表社員
の関係にありますが、社員が複数人いる場合には、会社によって、
・業務執行社員でも代表社員でもない、ただの社員
・代表社員ではない業務執行社員
・代表社員である業務執行社員
の組み合わせが考えられることになります。
そして、業務については原則として「業務執行社員」の過半数で決めますが、
競業避止義務や利益相反取引の制限のように、
他の「社員」の全員や過半数で決めるものもありますので、
合同会社を設立する際には、社員としてだれに、何人、参加してもらうかや、
各事項の決定方法について「定款」でどのように例外を定めるかということが、
設立後の合同会社の円滑な運営のために、
非常に重要になってくるということがいえます。