~知ってトクする不動産に係る特例(相続編)~
『空き家』問題に迫ってみましょう
今月号は、保険×不動産マイスター 津曲(つまがり) 巖(いわお)より、
お届けいたします。
今月は、特に多くのご相談をいただいているいわゆる「空き家問題」について
相続の現場、また、所有されていらっしゃる方からのご相談などから
いくつかの事例について、解説します。
第3回目は、【特定空家】についてみていきましょう。
● 「特定空家」とは
平成26年11月27日に公布された「空家等対策の推進に関する特別措置法」
(平成26年法律第127号。以下「法」という。)において、特定空家等は、
空家等のうち、法第2条第2項において示すとおり、以下の状態にあると
認められる空家等と定義されていいます。
(イ)そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
(ロ)そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
(ハ)適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
(二)周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
特定空家等のうち(イ)又は(ロ)については、現に著しく保安上危険又は著しく
衛生上有害な状態の空家等のみならず、将来著しく保安上危険又は著しく衛生上
有害な状態になることが予見される空家等も含めて、幅広く対象と判断すること
のできるものであることに留意が必要です。
● 【特定空家等】に指定されてしまったら・・・
各自治体により「指定」の程度は若干異なるようですが、国土交通省のガイド
ラインに添った指定がなされます。指定されてしまうと、次のような段階を
経ることになります。
(1) 行政による改善への助言
(2) 改善の兆しが見えない場合、行政による指導
*助言・指導の段階で改善がなされれば特に罰則はありません。
(3) 指導でも改善の兆しが見えない場合、行政による「勧告」
がなされることになります。
「勧告」がなされると「罰則」を受けることとになります。
「罰則」とは固定資産税・都市計画税に対する軽減措置から除外されること
になります。
固定資産税は、通常の家屋であれば、200㎡以下は6分の1、
200㎡超は3分の1に軽減されています。
同様に、都市計画税は、200㎡以下は3分の1、200㎡超は3分の2に
軽減されています。
つまり、固定資産税は6倍に、都市計画税は3倍になる可能性があるという
ことになるのです。
(4) 勧告でも改善の兆しが見られないと「命令」がなされます。
ここまでくると固定資産税等の軽減措置から除外されるだけでなく
罰金(50万円以下)が科されることになります。
更に、「行政代執行」がなされ、多くの場合、行政が所有者に代わって
解体し費用を所有者に請求することになります。
● 【事例】をみてみましょう
2020年に相続で取得した都内の実家(空き家になって数十年)約190㎡
の土地建物につき、「特定空家」の対象となった旨、
区より改善を求められました。
どうせ固定資産税等が6倍になるなら建物を取り壊して、
駐車場にすればと不動産会社よりアドバイスを受けたが実行すべきかどうか。
いかがでしょうか。一見、よい提案のように見えますが、次の検証も必要です。
改善の内容によりますが、
(1) リフォームなどで費用を最小限に抑えて「賃貸」できないか。
(2) 駐車場にした場合の「収益」から「費用」を差し引いて跳ね上がった
固定資産税等を補うことが可能か。
(3) 将来、自身で利用の予定がなければ「売却」して資産の組み換えは
できないか。
最低でも、上記3点の検証をして実行することがベストです。
大家さんの道しるべには、不動産に係るすべての場面で専門家が
ワンストップでおります。お気軽にご相談ください。
最終回は、近年注目されている「古民家」についてお話します。