『大家さんと融資の付き合い方』
こんにちは。ファイナンシャル・プランナーの駒崎です。
今月の特集では、『融資』をテーマに情報提供をしております。
4回目は「借換えするべきか」になります。
賃貸物件の建築や購入は多額の資金が必要になるため、
アパートローンや不動産投資ローンを利用するケースが多くなります。
また、現金一括で建築や購入ができる場合でも、
借入れをあえて活用することでレバレッジを効かせることができ、
手元資金を別の物件購入や修繕費に充当することができるようになります。
しかし、借入金の金利が高ければ返済額が多くなるため、
資金繰りを悪化させてしまうことが考えられます。
このような資金繰りを改善させる方法として、
借換えをすることが選択肢の一つになります。
借換えを検討するポイントを複数の観点で解説いたします。
■借換え融資の審査
現在の金利よりも低い金利に借換えするには、
物件取得時に低い金利で借入れができなかった理由を知る必要があります。
融資の審査においては、
安全性・収益性・成長性・流動性・公共性の5原則を元に、
返済能力・返済財源、物件の担保力、申込人の信用力等を判断し、
融資額、返済期間、適用利率の条件を出しています。
賃貸物件の場合は物件の担保力が非常に重要で、
担保の評価額(融資上限額)は掛目と収益還元法を利用しています。
不動産担保で掛目を利用する理由は、建物換価の困難性、
建物に他人が入居することによる立退き交渉、
処分の際に早期回収に向かない、地価下落の可能性、
投下資本通りに換価性がないこと等があげられます。
なお、掛目率は路線価額を一つの指標にしつつも金融機関により異なります。
収益還元法は、
担保物件が将来得られるであろうと期待される
賃料収入から諸経費を引いた純収益(NOI)を、
現在価値(収益価格)に引き直す計算方法で、
直説法の場合は、NOI÷還元利回り=収益価格となります。
掛目と収益還元法(直説法・DCF法)を元に、各種融資条件が提示されます。
■借換え可能エリア
賃貸物件は、物件の担保評価が重要になりますので、
都市銀行や地方銀行、信用金庫や信用組合、
JAバンク以外で借入れする場合は、
融資対象エリアを定めているケースが少なくありません。
(例)
首都圏:東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県(東京中心まで1.5時間エリア)
近畿圏:大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県
(大阪中心まで1時間エリア)
その他:名古屋市、福岡市の一部
物件対象エリアは金融機関によって異なりますが、
低金利の条件が出る金融機関であるほど、
物件対象エリアを首都圏や近畿圏の一部のみに絞っています。
そのため、申込人の属性や健全性の高い事業計画を立てていても、
物件の対象エリア外であれば、低金利での借入れが難しいのが現状です。
つまり、そのようなエリアの物件を所有していると、
そもそも借換えは難しいのが現状です。
■融資率
物件購入時は、売買価格+諸費用が発生しますが、
売買価格を100%とした場合、諸費用を含めた100%を超える借入れをしていると、
借換え時点の残債減少率が低いため、
物件の担保評価割れとして借換えが難しくなります。
また、現在、物件購入時のアパートローンや不動産投資ローンでは、
売買価格の10%~20%の自己資金を推奨しているため、
90%以上の融資率では、借換えするのが難しい状況です。
■借換え時の諸費用
借換えをする際には、融資手数料、経過利息、収入印紙代、
抵当権設定登記費用、抹消登記費用、住民票取得費が発生します。
また、既存の借入れを一括返済するためには、
繰上元金×数%の違約金が発生する場合があります。
そのため、借換え時に発生する諸費用を借換え後の融資額に含めるケースが
ありますが、既存の残債よりも借入額が増えるため、
低金利によるメリットが、
借入額の増額分を超えるインパクトが必要になります。
借換え時の諸費用も含めた、
新返済額と総支払額の軽減になるかがポイントになります。
■条件変更
既存の借入れを単に低い金利に条件変更できるケースがあります。
この場合、発生する諸費用は収入印紙代くらいで済みますので、
借換えよりもメリットが高いです。
しかし、他行での本審査が承認されてから交渉しないと、
条件変更に応じてもらうのはかなり難しいでしょう。
<まとめ>
借換えできるかどうかは、条件に該当するかどうかがキーポイントです。
以下に該当する場合は、条件の良い金利や返済期間(延長)で
借換えを検討しましょう。
・既存の金融機関で金利の条件変更に応じてもらえない
・物件が借換え可能エリア内
・融資率90%未満
・借換え時の諸費用を借換え後の融資額に含められる
・借換え後の月々返済額が少なくなる