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生前贈与で不動産を取得。相続時に相続放棄できなくなる?

渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第191回

相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。

Q相続時精算課税制度の非課税枠2,500万円を使って、
親の不動産を先にもらっておこうと考えています。
この不動産は親の財産の大部分を占めるのですが、
親が亡くなったときに借金が多額にあって相続放棄をしたくても、
生前贈与を受けているために放棄できなくなるということはありますか?

A
1. 相続放棄ができるか?
生前贈与を受けていても相続放棄は可能です。
相続時精算課税制度は、60歳以上の親から18歳以上の子に対して、
2,500万円までの贈与を非課税で行える制度です。

非課税なのは贈与税が非課税であって、相続税は課税されます。
生前贈与した財産を相続時に相続税で精算するのです。
いわば、「相続財産の前渡し」をする制度です。

相続財産を前渡しされたのであれば、
相続放棄はできないのではないかと不安に思うかもしれません。

というのも、相続放棄は、
相続開始を知った時から3ヶ月以内に
家庭裁判所に申述する必要がありますが、
亡くなった方の財産を使用したり、
処分したりすると相続を承認したものとみなされ(法定単純承認)、
相続放棄はできなくなります。

この相続財産の前渡しとも言える生前贈与を受けたことが、
単純承認にあたるのではないかと懸念されますが、
生前贈与と相続放棄はそれぞれ独立した関係にあります。

つまり、生前贈与で不動産を受け取っていても、
それとは別に相続放棄の手続きを行うことができるのです。

2. 詐害行為取消権のリスク
借金が多額にある場合、
債権者が詐害行為取消権を行使する可能性があります。
これは、債務者が債権者を害することを
知りながら財産を減少させる行為を取り消す権利です。

過去の裁判例(最判昭和49年9月20日)では、
「相続放棄は、詐害行為取消権の対象とはならない」と判断されています。

しかし、生前贈与をする時点で、
贈与者に多額の借金があることを知りながら、
生前贈与を受けているなど詐害行為があると認められれば、
贈与契約が詐害行為取消権の対象となる可能性があります。

3.相続放棄した場合の注意点
相続放棄をしても、
相続時精算課税制度による贈与を受けていれば
相続税の課税が生じます。

また、他の相続人がいる場合、
遺留分の問題が発生する可能性があります。
相続時精算課税制度を利用した贈与も、
遺留分算定の基礎財産に含まれ、
他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があるのです。

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ABOUT ME
渡邊浩滋
大家さん専門税理士事務所、渡邊浩滋総合事務所代表。当サイトを運営する大家さん専門税理士ネットワーク「Knees(ニーズ)」代表。 自らも両親から引き継いだアパートを経営する大家であり、「全国の困っている大家さんを助けたい」という夢を叶えるべく日々奔走している。 全国でのセミナー出演、コラム執筆等多数。
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