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認知症対策は家族信託しかないのか?

渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第197回

相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。

Q 父が賃貸経営をしていますが、80歳を過ぎていて認知症が心配です。
家族信託を検討していますが、費用が高くて躊躇しています。
他に認知症対策はあるのでしょうか?

A
大家さんにとって、将来の認知症リスクへの備えは重要です。
一般的に認知症対策として「民事信託(家族信託)」が注目されていますが、
その高額な費用が導入の障壁となっているケースも少なくありません。
はたして、認知症対策は民事信託しかないのでしょうか?

民事信託(家族信)託以外で認知症対策に使える対策を紹介します。

1. 任意後見制度の活用
任意後見制度は、
認知症になる前に自分が選んだ人に財産管理を任せる契約を結び、
判断能力が低下した後にその効力が発生する制度です。

(1)メリット
・財産管理を任せる人を自分で選べる
・依頼内容を自分で決められる

(2)デメリット
・任意後見監督人への報酬が発生する
・家庭裁判所の管理下に置かれる
・契約で定めた内容が全て実行できるとは限らない

2. 生前贈与による資産移転
賃貸物件を生前に相続人に贈与することで、
認知症になる前に賃貸経営を自分から切り離すことができます。

(1)メリット
・相続時精算課税制度を利用すれば2,500万円まで
贈与税がかからないため、建物だけの贈与が検討できる
・賃貸経営の責任を早期に移転できる

(2)デメリット
・令和6年以降の相続時精算課税制度であれば、
110万円の非課税枠が使えるようになったが、暦年贈与には戻れなくなる。
・先に生前贈与を受けることで、他の相続人の争いの種になる可能性がある。

3. 法人化による経営の分離
法人を設立して賃貸物件を移転することで、
個人の認知症リスクから賃貸経営を守ることができます。

(1)メリット
・節税効果がある可能性がある
・建物だけを法人に売買することができる
・法人として継続的な経営が可能になる

(2)デメリット
・不動産の移転に伴う登録免許税や不動産取得税がかかる
・借入が残っている場合には、借り換え手続きが発生する
法人の維持費用や税理士費用などのランニングコストが発生する

3.まとめ
認知症対策は、家族信託だけでなく、
他の方法と組み合わせることでより効果的になります。
例えば、「建物を法人化し、土地を家族信託にする」方法では、
法人化の節税効果と信託の柔軟性を同時に活用できます。
また、家族信託を補完する形で任意後見制度を併用することで、
法的な保護と柔軟な財産管理を両立することも可能です。

認知症対策は、早期の計画と専門家への相談が鍵となります。
財産の種類や家族構成、税務上の影響を総合的に考慮し、
自分に最適な方法を見つけることが望ましいでしょう。

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ABOUT ME
渡邊浩滋
大家さん専門税理士事務所、渡邊浩滋総合事務所代表。当サイトを運営する大家さん専門税理士ネットワーク「Knees(ニーズ)」代表。 自らも両親から引き継いだアパートを経営する大家であり、「全国の困っている大家さんを助けたい」という夢を叶えるべく日々奔走している。 全国でのセミナー出演、コラム執筆等多数。
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