渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第200回
相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。
Q 相続放棄の期限(熟慮期間)は
「自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内」
と定められていますが、相続があった日から
3ヶ月以内ではないのでしょうか?
A
1.相続放棄の熟慮期間と起算日のズレについて
民法では、相続放棄の期限(熟慮期間)は
「自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内」
と定められています(民法915条1項本文)。
通常、相続開始の原因は被相続人の死亡であり、
多くの場合は、
被相続人が亡くなった日=相続開始日=相続開始を知った日
となります 。
しかし、法律上・実務上は
「相続開始を知った日」が被相続人の死亡日と
一致しないケースがあります。
2.相続開始を知った日が死亡日と異なる主なケース
(1)被相続人の死亡事実を後日知ったケース(疎遠・消息不明等)
被相続人の訃報がすぐに伝わらなかった場合、
相続開始日(死亡日)と相続開始を知った日がずれます。
例えば、被相続人と疎遠だったため
死亡の事実を後になって知ったケースが挙げられます。
・相続人が海外や遠方に住んでおり、死亡の連絡が遅れた
・遠い親戚で連絡先が分からず、知らせが届かなかった
・被相続人と離婚後に別居していた子どもなどに連絡手段がなかったため知らせが遅れた
(2)死亡時には相続人でなかった者が後に相続人となったケース
被相続人の死亡当初は相続人の地位に無かった人が、
後から相続権を取得した場合も、死亡日と「知った日」がずれます。
・先順位相続人の放棄により後順位者が繰り上がった場合
被相続人に近い順位の相続人が相続放棄をすると、
はじめて次順位の者に相続権が発生します。
例えば「親がいない状況で、子が放棄したために、
第三順位の兄弟姉妹が相続人になった」ケースなどです。
・被相続人の死後に認知された子(死後認知)
被相続人の死亡後に家庭裁判所の
認知調停・審判等によって非嫡出子が認知されると、
その子が遡及的に相続人となります(民法784条)。
法律上は死亡時にさかのぼって相続権を取得しますが、
実務上は認知の審判確定を知った日が
相続開始を知った日とみなされます 。
(3)相続財産の存在を後日認識したケース(負債・資産の発覚遅れ等)
被相続人の死亡自体は知っていたものの、
遺産が存在しないと信じていたために相続放棄の判断材料が揃わず、
結果的に熟慮期間の起算点が遅れるケースがあります。
例えば「被相続人には財産が全くない(プラスもマイナスもない)と
信じていたが、後になって負債(借金)が判明した」場合です。
最高裁判所昭和59年4月27日判決は次のように判示(要約)しました。
「相続人が被相続人の死亡と自己が
相続人となった事実を知っていても、
被相続人に相続財産が全く存在しないと信じ、
その信じたことについて相当な理由があるときには、
熟慮期間の起算日は死亡を知った時からとするのは相当でなく、
相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した時または
通常認識しうるべき時から起算すべきである」
実務上も、被相続人と疎遠で生活状況が分からず、
借金の有無を調査することが極めて困難だった事情があるなど
正当な理由がある場合には、この判例理論により救済される可能性があります。
(4)相続人が直ちに相続開始を認識・判断できない特殊ケース
相続人本人の事情で、
「相続開始を知った日」が死亡日から遅れる場合もあります。
・相続人が認知症・昏睡状態など判断能力を欠く場合
相続人に意思能力がなく、
かつ成年後見人等が未選任の場合には、
法律上「自己のために相続開始があったことを知った時」が
到来しないと解されます。
家庭裁判所に申立てて成年後見人等を選任すれば、
その後見人が本人のために相続開始を知った時から期間が進行します。
以上のように、「相続開始を知った日」が死亡日と
一致しないケースは様々あります。
相続放棄を検討する際は、
自身の状況がどのケースに当てはまるかを確認し
法律上の起算日を見極めたうえで
期限内に適切な手続きを取ることが重要です。
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