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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第230回】
不動産鑑定士×一級建築士 田口 陽一が斬る!③

~新型コロナウィルスが写しだす今後の不動産~

今月号は、一級建築士・不動産鑑定士の田口陽一より、
お届けしています。

新型コロナウィルスが世界規模で猛威を振るうなか、
新型コロナウィルスによりお亡くなりになられた方々に
心からご冥福をお祈り申し上げますとともに、
罹患された方々に心からお見舞いを申し上げます。

日本のみならず世界中で新型コロナウィルス感染が拡大し、
社会全体が変容する中、不動産への影響は??

人々の生活のあり様、
人々の経済社会情勢、
人々がどのようにして価値を生み出すのか、
そもそもこれからの時代の価値とは何なのか、
といったことが空間や場所のあり方を決めます。
空間や場のあり方は、不動産市場に大きな影響を与えます。

我々の暮らしや価値観を掘り下げてみることが、
コロナ渦の向こう側を見通すヒントになりそうです。

第3回目の今回。

■コロナ後の不動産マーケット

コロナ下の経済情勢についても概観しておきましょう。
私は経済分析の専門家ではないので、
ラフな確認にはなりますが・・・

・株価
日経平均の推移を見てみますと、
2月上旬24,000円前後から、3月下旬迄に約3割も下落し、
その後、上昇傾向に転じて23,000円前後まで回復し、
また少し、下落・調整される場面も見られる。
ざっくりですが、そんな動向です。
世界各国の株価動向等については、
私には荷が重いので、ここでは割愛しますね!
今はインターネットですぐさま調べられますから、
是非傾向だけでも眺めておくことをお勧めします。

・金融情勢
日本だけでなくもはや世界中で、
企業等への支援的融資が急増しているのではないでしょうか。
平常時の融資・審査とは異なる尺度で
膨大な債務が拡大しているとも言えるでしょう。

・為替
為替相場は海外投資家の投資行動に影響を与えますよね。
激烈な円高円安は起きていないものの、
それでも円高方向、円安方向、そして最近ではまた少し円高方向と、
それなりに上下していることは確かです。
こちらも詳細は割愛しますが、
ご自身でドル円、対ユーロ、対ポンドなどなど、
インターネットでチャートを眺めるだけでも大まかな動向を把握することができます。

・雇用環境
こちらも日本だけでなく、世界中で悪化していると言えます。
本メルマガ発行時点で、休業要請や営業自粛等が日本でも欧米でも緩和局面ですが、
コロナ前の通常の営業状況に戻ったわけではありません。
縮小しての営業、業態変更しての営業等・・・
雇用環境も多大な影響を受けています。
世界各国の各種助成金・支援策も永続的ではなく、
あくまで急激なショック吸収の為の、緩衝材のようなものです。
最終的には、“新たな働き方”へ変化適応することが、働き手にも求められるというもの。
この変化の過程で雇用環境は不透明感が強まり、                   その状態は一定期間継続するものと思われます。

そしてその状態は、
全体がいつか回復するという単純なものではなく、企業も働き手も、
変化適応した者だけが生き残り経済回復の恩恵を享受できるような           選別が進むように思います。

今は、変化適応への過渡期として考えた方がいいのかもしれません。
今後は「雇用環境」と十把一絡げに括ること自体が
時代遅れになるかもしれないですね。
在宅勤務一つとっても、企業や働き手の個別性により様々。
職種、業態、就業形態によって、
その特性がドラスティックに異なる労働市場になっていくのかもしれません。
そもそも、「労働者」と「使用者」という単一的な図式自体が、
働き方の1側面に過ぎません。
フリーランスや零細事業者、多様な業種業態が増えることで、
社会の多様化、複層化を担い、全体として生産性を高めていく。
そういった活動というのが、
コロナ渦によって加速したような印象を個人的には受けています。

・東京オリンピック・パラリンピック
世界中から人(選手・観客・関係業者)が集まるスポーツの祭典。
私のオリンピックのイメージはそんな印象ですが、
もし世界中から人が集まるとしたら、
コロナウィルス感染増大が収束していなければなりません。
ウィルスというのは変異しますから、
完全なワクチンその他、対策が間に合うのかどうか。
私には来年のことはわかりませんが・・・
また、逆に人が集まらないオリンピックなら、
(限られた選手だけとか)
開催の確度は高まります。
が、その経済効果は限定的でしょう。
人の動きが小さいほど、落とすお金も少額となり、
結局そのお金の一部が不動産の取り分であると考えると・・・
結局、今の段階では確定した結論がないわけですが、
不動産市場への影響としては、不透明感が強いと個人的には感じています。
逆に開催が確定した場合には、
この不透明感の反動としてワッと盛り上がる場面もあるかもしれません。
また、単純に直接的な経済効果のみならず、
間接的に心理的景気効果も割合大きいという面も否めません。
直接間接の影響を見極める必要がありそうです。

・災害
地震雷火事オヤジ、というか、最近ではオヤジよりコロナの方が恐い!
冗談のようですが、もはや冗談ではなく、
災害対策の場面でもコロナウィルス感染対策との両立が求められています。
災害続きの昨今。
もはや身近な話題ともいえる避難所の問題もそうですが、
今年はさらにコロナです。
政府・自治体・自衛隊・・・
そういった公的な支援をアテにできない現実を、
我々は冷静に受け止める必要があります。
以前、最低3日間(72時間)の備えをしましょう、
と言われていましたが、
ここ最近は、1週間とも言われています。
広域的・大規模な災害の場合、幹線道路損傷その他の影響も考えると、
1週間でもちょっと心配とも言えます。
さらにコロナです。
国民全員が、自分自身で個々に、
災害対策を実施することが、
コロナ渦での防災対策の基本とも言えるでしょう。
『在宅避難』。
“在宅”で“避難”って??
矛盾したような言葉も言われていますよね。
でもこれは現実です。
災害が甚大であるほど、
“在宅”で“避難”することが現実味を帯びます。

・第2波、第3波の懸念
新聞報道等が最も有効で新鮮な情報ですから、詳細は割愛します。
第2波、第3波の懸念がくすぶる限り、経済正常化への道筋は遠のき、
やがて不動産市場へも具体的な形となって表出してくるものと思います。
かの著名投資家ウォーレン・バフェットも、ここ最近は守りを固める姿勢が窺えます。

・コロナ後の不動産市場
本メルマガ発行時点で、コロナ渦の終息時期は見通せず、
世界情勢としても経済活動再開と感染拡大防止のバランスの難しさは
各種報道を見れば明らかです。
第2波への懸念等、余談を許さない状況が当面続くと言えます。
こういった中で、株式は機敏な反応で短期的に上下することもあるでしょうが、
不動産市場についてはより大局的な見地から捉えていく必要がありそうです。
過去の人類と感染症の歴史を色々と調べてみるのも、
今後の予測という意味では参考になるのかもしれませんね。
そして、過去を振り返って不動産市場と大きな関連性があるのは
やはり金融情勢です。
温故知新。金融機関の貸し出し姿勢、金利情勢、
日銀の動き、政府がどういった政策スタンスをとっていくか、
この辺りをよく観察することが重要と思います。
大手不動産会社やREITや不動産ファンドの動向も、
少々時間差はあれど、
今ではかなり公表データを取得できるようになりました。
特にREITは個人投資家向けにもわかりやすい資料開示がなされています。
こういったデータをウォッチするのも大変参考になると思います。
たった今の不動産市場はどうでしょうか。
一部報道や雑誌では「不動産暴落」といった不安を煽るものも見られますが、
暴落とか投げ売りといった現象が起きているとは思えません。
「コロナ渦もチャンス。まだまだ買います。」
という声も聞かれ、
売り買いの話が交錯している状況でもあります。
ただ、どちらかといえば様子見姿勢が強まっており、
確実な優良物件に仕入れを絞り込むような動きが強まっているように感じます。
この不透明感や様子見そのものが
取引の見送りや先送りといった売買停滞を招き、
不動産市場にはマイナスです。
様々な兆候を見逃さず、具体的な行動に移していく必要があります。
「不動産暴落」は後から振り返って既に「暴落していた」ことを確認することが多く、
渦中にいるとゆでガエルのように気付かないこともあるのです。
ですから、
売却予定物件は腹八分目の価格でも
確実に売却していく淡々としたスタンスも重要でしょう。
いずれにしても、一本調子で強気姿勢が続いていた不動産売買市場には転機が訪れ、
不動産賃貸市場については、
社会の変容に合わせて早くも具体的な動きが出てきていると言えるでしょう。

 

ABOUT ME
田口陽一
明治大学理工学部建築学科卒業。一級建築士、不動産鑑定士、宅地建 物取引士、マンション管理士。東京建物株式会社にて、不動産鑑定評 価、都市再開発、オフィスビル売買・運営、SPCスキームを活用した 不動産事業等、理論・実務の両面から不動産業務を経験し実績を残す。 不動産ソリューションは、実践的経験が何より重要であるばかりでな く、建築・税・法務・金融・理論的評価・現実の売買等々、複合的領 域にわたることから、常に複眼思考でベストな解決策を構築している。 鑑定評価や売買のみならず、バランス重視のハイブリッドなアドバイ ザリーを得意とする。
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