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現預金がなく不動産のみの場合の相続税納付方法はどうやる?

渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第215回

相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。

Q相続財産に現預金がなく、
不動産しかありません。
不動産を売却して現金化して納税するしかありませんが、
不動産を納期限前に売却すると、「小規模宅地の減額の特例」の適用が受けられず、
相続税が高くなると言われました。どうすればよいでしょうか?

A
1. 小規模宅地の減額の要件。「申告期限まで保有」とは?
小規模宅地等の特例を適用するためには、
相続税の申告期限(被相続人の死亡日の翌日から10ヶ月以内)まで、
その土地を相続人が保有し続けていることが原則として必要です。
これは「保有継続要件」と呼ばれています。

例外として、居住用の小規模宅地の減額を受ける相続人が、
被相続人の配偶者の場合は、
申告期限前に不動産を売却しても特例の適用を受けることができます。

しかし、それ以外の相続人(子や兄弟など)が申告期限前に売却すると、
特例は適用されなくなってしまうのです。

2. つなぎ融資の活用
現預金がない場合でも、
不動産を納期限前に売却せずに相続税を納める方法として、
不動産担保ローン(つなぎ融資)の活用が考えられます。
これは相続した不動産を担保にして金融機関から融資を受け、
そのお金で相続税を納付する方法です。

この方法であれば、小規模宅地等の特例を適用しながら、
納期限内に相続税を納付することが可能です。
申告期限を過ぎてから、不動産を売却すればよいことになります。

融資の審査に時間がかかることがあります。
申告期限直前ではなく、
金融機関には余裕をもって融資の相談をするようにしましょう。

3. 小規模宅地の上限面積を超える土地の売却
小規模宅地の減額の適用には、
上限面積(居住用なら330平方メートル)があります。

上限面積を超えている場合、
超えた部分の土地については、減額が受けられません。
それであれば、上限を超える土地の一部を売却して
納税資金を確保する方法も考えられます。

例えば、広い庭付きの住宅を相続した場合、
庭の一部を分筆して売却し、
残りの部分については特例を適用することができます。
この方法なら、居住スペースを維持しながら、
納税資金を確保することが可能です。

ただし、分筆には専門家への依頼費用や時間がかかることに注意が必要です。
また、土地の形状や地域の規制によっては分筆・売却が難しい場合もあります。

4. 延納制度の利用
一定の要件を満たせば「延納」という形で最長20年までの分割払いが可能です。
相続財産の大半が不動産である場合に利用されることが多く、
利子税はかかるものの、長期間にわたって少しずつ納付できます。
不動産を売らずに済むため、
小規模宅地特例の要件を満たしたまま
納税できるのが大きなメリットです。

なお、延納でも払えない場合、
相続財産そのものを税金として納める「物納」があります。
物納は、相続税評価額で納税したことになります。
小規模宅地の減額を適用した土地は、
減額された土地の評価額で納めることになってしまう点に注意が必要です。

5. まとめ
相続財産に現預金がなく不動産しかない場合でも、
小規模宅地等の特例を失わずに
相続税を納める方法はいくつかあります。
どの方法を選択するかは、
将来の不動産活用計画などを含めて検討しましょう。

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ABOUT ME
渡邊浩滋
大家さん専門税理士事務所、渡邊浩滋総合事務所代表。当サイトを運営する大家さん専門税理士ネットワーク「Knees(ニーズ)」代表。 自らも両親から引き継いだアパートを経営する大家であり、「全国の困っている大家さんを助けたい」という夢を叶えるべく日々奔走している。 全国でのセミナー出演、コラム執筆等多数。
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