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法定相続分を下回る遺産分割協議は贈与になる?

渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第224回

相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。

Q相続の遺産分割協議で、
法定相続分よりも満たない相続分しか受け取らないと、
少なくもらう人から多くもらう人へ「贈与」したものとして「贈与税」が課税されるのでしょうか?
また、代償分割をする場合、代償金が法定相続分よりも下回っている場合は、
同じく贈与になるのでしょうか?

 

A
1.法定相続分と異なる遺産分割では贈与になるか?
遺産分割協議で法定相続分と異なる割合で財産を分けても、
それは「相続」の範囲内での調整であり、
相続人間の「贈与」とはみなされません。

例えば、法定相続分が2分の1ずつの兄弟で、
兄が全財産を相続し、
弟が何も相続しない場合でも、
これは兄が多く相続しただけであり、
弟から兄への贈与ではありません。

日本の相続税制は「遺産取得課税方式」を採用しています。
相続人全体で相続税を計算した後、
各人の取得財産額に応じて税額を配分します。
つまり、誰がどれだけ取得しても、
それは相続税の枠内で処理される問題なのです。

相続税基本通達19の2-8でも、
遺産分割協議による取得は相続による取得として
扱われることが明記されています。

2.代償分割でも原則として贈与税はかからない
代償分割で支払われる代償金も、
遺産分割の一環として扱われます。

代償分割とは、
相続財産の中で分けにくい不動産などの資産を
特定の相続人が現物のまま取得し、
その代わりに他の相続人に対して代償金として
現金やその他の財産を支払うことで、
相続分を調整する遺産分割方法です。

代償金が法定相続分相当額を下回っていても、
それだけで贈与税が課税されることはありません。
相続税の計算では次のように計算されます。
◯不動産取得者:取得不動産の評価額 - 支払った代償金
◯代償金受取者:その他相続で取得した財産 + 受け取った代償金 +

このように、代償金は相続財産の調整として処理されるのです。

3.例外的に贈与税が課税される場合
ただし、以下のようなケースでは注意が必要です:
(1)代償金が過大な場合
取得した財産の価額を超える代償金を支払った場合、
その超過部分は贈与とみなされる可能性があります。
例えば、2,000万円の不動産を取得した長男が、
3,500万円の代償金を支払った場合、
超過する1,500万円は贈与の意図が
あったものとして贈与となる可能性があります。

(2)遺産分割をやり直した場合
一度確定した遺産分割協議を後からやり直すことは
法律上は可能性です。
しかし、税務上はは新たな贈与や交換(譲渡)とみなされ、
贈与税や所得税の対象となります。

(3)代償金の原資が問題となる場合
生命保険金は、受取人の固有の財産という扱いになります。
税務上は、みなし相続財産として相続税の課税対象になります。
生命保険金の受け取りのみで、
遺産を取得していない相続人が代償金を支払うと、
取得した遺産がないにもかかわらず代償金を払っていることで、
贈与とみなされる可能性があります。

4.まとめ
法定相続分と異なる遺産分割や、
法定相続分を下回る代償金の設定自体は、
贈与税の対象にはなりません。
ただし、例外的に贈与となるケースもあるので、
税理士などの専門家に相談しながら遺産分割協議を進められるとよいでしょう。

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ABOUT ME
渡邊浩滋
大家さん専門税理士事務所、渡邊浩滋総合事務所代表。当サイトを運営する大家さん専門税理士ネットワーク「Knees(ニーズ)」代表。 自らも両親から引き継いだアパートを経営する大家であり、「全国の困っている大家さんを助けたい」という夢を叶えるべく日々奔走している。 全国でのセミナー出演、コラム執筆等多数。
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