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賃貸アパートの相続。すぐに建て替えると小規模宅地の減額適用できない?

渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第232回

相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。

Q父の遺産に、築50年となる賃貸アパートがあります。
建物の老朽化が進んできているため、
一刻も早く建て替えた方がよいと思っています。
このアパートの敷地について小規模宅地の特例を適用しようと
思っていますが、問題ないでしょうか?

A
1. 小規模宅地の減額の継続要件
貸付事業用宅地等(アパート敷地など)について
小規模宅地等の特例(200㎡まで50%減額)を適用する場合、
相続人には以下の要件が課されます(租税特別措置法69条の4)。

事業継続要件:相続開始前から申告期限まで、
その宅地で貸付事業を行っていること
保有継続要件:申告期限まで宅地を保有していること

これらの要件は、被相続人の貸付事業を相続人が承継し、
少なくとも申告期限(相続開始から10ヶ月)
までは継続することを求められます。

したがって、相続後すぐに貸付事業をやめたり
宅地を処分したりすると特例が受けられなくなることがあります。

2.建て替え時の取扱い
建て替えを行う場合、
一時的に建物が存在しない更地状態となり、
形式的には貸付事業が中断することになりますが、
通達により救済措置があります。

措置法通達69の4-19では、
相続人が相続税の申告期限までに建て替え工事に着手し、
申告期限内またはその直後に新たな貸付事業を
開始する意思と準備がある場合には、
申告期限時点でも宅地が事業に供されているものと
みなすとされています。

つまり、更地となった期間が申告期限までに存在していても、
それが将来の貸付事業再開のためのであれば、
特例の適用上は宅地の事業利用が連続しているものとして扱われるのです。
ですから、必要であれば申告期限を待たずに
建て替えすることは問題ないといえます

なお、相続時時点では賃貸しているため、
土地の減額評価(貸家建付地評価)も適用できます。

3.建て替え中に相続があった場合
もし、仮に被相続人であるお父様が
生前中に建て替えに着手し、
建設途中に相続が発生した場合は小規模宅地の
減額はどうなるのでしょうか。

措置法通達69の4-5では、
建て替え中に相続が発生してしまった場合でも、
建物等に係る事業の準備行為の状況からみて
当該建物等を速やかにその事業の用に
供することが確実であったと認められるときは、
継続的に賃貸しているものと取り扱われることになっています(措法69の4-5)。

小規模宅地の減額は、
建て替え中に相続が発生しても適用できることになります。

しかし、土地の減額評価(貸家建付地評価)は、
相続時時点で賃貸していないことになり、
原則は適用できません。

しかし、平成4年12月9日の裁決事例では、
建て替え中でも限定的に貸家建付地評価が認められる
場合があると判断しました。

「相続開始の時において、建物を建築中であっても、
旧建物の賃借人が引き続いて新建物に入居することとなっており、
立退料の支払いがない場合等あるいは、
新築中の建物について、権利金の授受が完了し、
賃貸借契約が成立している場合には、
新建物のうち当該賃借人に賃貸する部分に対応する部分の宅地は、
当該賃借人の支配権が及んでいるといえるから、
貸家建付地として評価するのが合理的であると認められる。」
としています。

例えば、高い立ち退き料を払うよりは、
引っ越し代や仮住まいの礼金などを負担することで、
建て替え期間中だけ別の住まいに居住してもらい、
新アパートができた場合には、
引き続いてその入居者に賃貸することにしておけば、
建て替え中に相続があったとしても
貸家建付地評価が適用できることになります。

4.まとめ
築50年の賃貸アパートの建て替えは、
相続後でも小規模宅地特例の適用は可能ですが、
申告期限(10ヶ月)までに工事着手が必要で、
遺産分割協議や建築計画を急ぐ必要があり、
相続人に大きな負担がかかります。

一方、生前に建て替えを済ませておけば、
相続時には確実に特例が適用でき、
貸家建付地評価による土地評価額の減額も受けられます。

老朽化による入居者の安全リスクや空室リスクを考えても、
お元気なうちに計画的に建て替えを実行されることが、
ご家族の将来の安心につながります。

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渡邊浩滋
大家さん専門税理士事務所、渡邊浩滋総合事務所代表。当サイトを運営する大家さん専門税理士ネットワーク「Knees(ニーズ)」代表。 自らも両親から引き継いだアパートを経営する大家であり、「全国の困っている大家さんを助けたい」という夢を叶えるべく日々奔走している。 全国でのセミナー出演、コラム執筆等多数。
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