渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第248回
相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。
Q不動産賃貸経営する会社の株式をすべて父が所有しています。この株式(非上場株式)を子である私が買い受けるか、別法人で買い受けるか、金額に違いがでるのでしょうか?
A
結論から言うと、違いが出ます。
非上場株式は、売却先が個人か法人かによって、
株価の計算ルールが変わるためです。
具体的には、法人に売却する場合には、
所得税基本通達59-6により、
財産評価基本通達の株価計算を「読み替えて」適用することになっており、
その結果、株価が高くなりやすいのです。
1.子が直接買い取る場合(個人間売買)の株価は?
2.
お子さんが直接買い取る場合は、
個人間の売買ですので、
株価は相続税や贈与税の計算で使う財産評価基本通達をそのまま使って計算します。
会社の規模区分(大会社・中会社・小会社)に応じて、
「類似業種比準価額」と「純資産価額」をミックスして評価します。
もしこの評価額よりも著しく低い価額で売買してしまうと
相続税法7条により、差額がお子さんへの「みなし贈与」として
贈与税の対象になる可能性があります。
3.法人が買い取る場合はどう変わる?
法人が買い取る場合は、所得税基本通達59-6により、
財産評価基本通達の規定を「準用」して株価を計算しますが、
いくつかの重要な読み替えがあります。
まず、お父さんが会社の「中心的な同族株主」に該当する場合、
会社の規模にかかわらず、
常に「小会社」として評価しなければなりません。
小会社の評価は、
「類似業種比準価額×50%+純資産価額×50%」
で計算します。
不動産賃貸会社のように含み益のある不動産を多く保有する会社では、
純資産価額が高くなりやすいため、
株価も高くなりがちです。
また、純資産価額を計算する際に、
会社が土地や上場有価証券を保有しているときは、
これらの資産を譲渡時の時価で評価しなければなりません。
個人間売買では路線価や固定資産税評価額
(実勢の8割程度)で計算できますが、
法人への売却では実勢時価を使うため、
不動産賃貸会社の場合はここが大きく効いてきます。
さらに、評価差額に対する
法人税額等相当額(37%)を
控除することもできません。
個人間売買のときはこの控除ができるため、
法人への売却ではその分だけ株価が高くなるということです。
加えて、「少数株主かどうか」の判定を、
買い手側ではなく売り手である
お父さんの譲渡直前の議決権割合で行います。
つまり、新しく作った法人を少数株主に
見立てて配当還元方式で安く評価しようとしても、
お父さんが支配株主である以上、
原則的評価方式が適用されるということです。
4.低い金額で売却した場合のリスクは?
法人に対して時価の2分の1未満で譲渡した場合は、
所得税法59条により、
お父さんは時価で譲渡したものとみなされ、
所得税が課税されます。
さらに、買い手である法人には
時価との差額が受贈益として法人税がかかり、
その法人をお子さんが支配している場合には、
相続税法9条によりお子さんに贈与税がかかる可能性もあります。
法人を間に挟んでも、
課税が三重に発生するリスクがあるのです。
5.まとめ
非上場株式の売却先が個人か法人かで、
株価の計算ルールが異なります。
法人への売却では、①常に小会社として評価される、
②土地等は路線価ではなく譲渡時の時価で評価する、
③法人税等相当額37%の控除ができない、
④少数株主判定が売り手基準になる、
という読み替えにより、
株価が高く算定されやすい構造になっています。
不動産賃貸会社では特にこの影響が大きくなりますので、
事前に専門家と十分検討することが大切です。
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