渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第257回
相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。
Q
所有している土地の地下を
新幹線のトンネルが通っており、
区分地上権という権利が設定されています。
建物の高さ制限はないのですが、
重い建物は建てられないという荷重制限があります。
このような土地は、
相続税ではどのように評価するのでしょうか?
A
1.地下のトンネルには「区分地上権」が設定される
土地の権利は、本来その上下すべてに及びます。
しかし、地下に鉄道トンネルを通すような場合は、
地下の一定の層だけを対象にした権利を設定します。
これを区分地上権といいます(民法269条の2)。
通常の地上権が土地の上下すべてに及ぶのに対し、
区分地上権は「地下◯メートルから◯メートルまで」といった
一定の範囲だけに効力が及ぶ点が異なります。
設定の目的・上下の範囲・荷重制限などの利用制限は、
登記簿の乙区で確認できます。
2.評価の基本的な考え方
区分地上権が設定された土地(底地)は、
その制限の分だけ評価を下げることができます。
算式は次のとおりです。
自用地としての価額 −(自用地としての価額 × 区分地上権の割合)
ポイントは、この「区分地上権の割合」をいくらにするかという点です。
3.割合の求め方は2通り
①原則は、設定契約の内容に応じて、
土地の利用がどれだけ妨げられているかを
個別に計算する方法です(土地利用制限率)。
②精緻ですが計算が複雑で、
不動産鑑定士の関与が一般的です。
②簡便法として、地下鉄等のトンネル所有を
目的とする場合は、割合を一律30%とすることができます
(財産評価基本通達27-4ただし書)。
新幹線のトンネルもこの「地下鉄等のずい道」に
含まれると考えられ、30%を使える可能性が高いといえます。
4.建築制限がない場合の注意点
実は、この30%という割合は、
「トンネルのせいで建物の階数が制限される」ことを
前提とした標準的な減額率です。
ご相談のように建築制限がなく荷重制限だけの場合、
本来の利用制限率で計算すると、
阻害される階層が少ないため30%を下回ることも考えられます。
つまり、納税者にとっては30%の簡便法のほうが有利になりやすいのです。
一方で、建築制限が全くないのに30%を主張すると、
税務調査で「実態に応じた割合で評価すべき」と
指摘されるリスクも理論上は残ります。
登記簿に「地下鉄等のずい道の所有」
目的が明示されていれば30%は概ね認められると考えられますが、
判断の根拠を申告書の添付資料として残しておくと安心です。
なお、地下40メートルより深い「大深度地下」を通る場合には、
区分地上権ではなく公法上の使用権が設定され、登記もされません。
区分地上権が登記されているなら、
比較的浅い部分を通るトンネルだと判断できます。
5.まとめ
地下に新幹線が通る土地は、
区分地上権の分だけ評価を下げられます。
割合は原則として個別計算ですが、
トンネル所有目的であれば30%の簡便法が使えます。
建築制限がない本件では30%が有利になりやすい一方、
その判断根拠を資料として残しておくことが大切です。
登記内容を確認のうえ、必要に応じて専門家と進めましょう。
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