令和5年度版 大家さんの「相続・事業承継」
こんにちは。ファイナンシャル・プランナーの駒崎です。
今月の特集では、大家さんの『相続』をテーマに情報提供をいたします。
●遺産分割対策は計画的な財源準備が必要
■不動産オーナーの相続・事業承継の特徴
賃貸経営を主な事業とする不動産オーナーは、
相続対策と事業承継を同時に行う必要があります。
その特徴は、以下の通りです。
・後継者が不動産(事業用資産)の多くを引き継ぐ必要がある
・後継者と他の相続人との間で、取り分のバランスが問題となる
・遺産分割や遺留分対応には、後継者に十分な財源が必要となる
・遺産分割で対立すると、早めに家庭裁判所の関与が必要となる
後継者を決めて育成することも大切ですが、
同時に遺産配分の調整や財源の準備も必要となるのです。
■争続問題の解消には財源が必要なワケ
遺産配分の仕方は、遺言書がある場合とない場合で決め方が異なります。
遺言書がない場合は、遺産分割協議で行いますので、これまで述べたように、
当事者間で遺産分割を合意しても、家庭裁判所が関与しても、
後継者がアパート(事業用資産)を引き継ぐためには、
代償交付金を支払う財源が必要となります。
相続時の財産すべてについて遺言書がある場合は、保管者や相続人が家庭裁判所に提出し、
検認の手続きを行います。
(法務局に保管されている自筆証書遺言と公正証書遺言は検認手続き不要です。)
遺言書が開封されると、遺言に従って誰にどの財産を配分するのかを決定しますが、
遺留分に反していないかどうか留意する必要があります。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
参照先:民法 第五編 相続 第九章 遺留分
遺言によって遺留分が侵害されることになった場合、
相続人は相続開始後にその侵害された分を金銭で請求
(遺留分侵害額請求)することができます。
つまり、遺言で事業用資産を後継者が引き継ぐことができても、
他の相続人の遺留分を侵害した場合、
遺留分侵害額を後継者が金銭で支払いする必要があるのです。
■財源準備には生命保険の活用が有効
貯蓄で代償交付金の財源を準備する場合、
計画的に準備を進めていかないと財源が貯まりません。
また、相続発生時には、被相続人の預金口座が凍結されるため、
遺産分割協議が確定する前の預金引き出しは、
葬儀費用の支払いなど、一定の理由且つ引出し金額にも制限がかかります。
相続はいつ発生するか分かりませんので、
直ぐに準備ができる生命保険の活用が有効です。
さらに、死亡保険金は、受取人固有の財産として遺産分割の対象外になりますので、
死亡保険金受取人は、代償交付金や遺留分侵害額を支払う後継者にする契約にします。
生命保険の保険種類は、終身保険にします。
申込時に被保険者の健康状態の告知が必要で、
加入年齢にある程度の制限がるのが平準払いの終身保険です。
(月払い、半年払い、年払い、前納)
被保険者の健康状態の告知がなく、90歳まで加入できる
(保険会社による)のが一時払終身保険です。
契約形態は、以下のようにします。
契約者(保険料負担者)=被保険者=被相続人
受取人=後継者である相続人
この契約形態であれば、財源の準備だけでなく、
相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)も活用できますので、
貯蓄で準備するよりも有利と言えます。