ブログ

決算報告書の8つのチェックポイント ~分譲マンション投資の魅力~

決算報告書の8つのチェックポイント
~分譲マンション投資の魅力~

実際に決算報告書を手にしたとき、
どこをどのように見れば優良物件を見極められるのか、
8つの具体的なチェックポイントについて詳しく解説していきます。

1.修繕積立金残高から読み解く将来の安定性
決算報告書を開いて最初に確認すべきは、修繕積立金の残高です。
マンションが将来にわたって健全に維持されていくかどうかを示す、
いわば体力指標といえるでしょう。

修繕積立金会計の欄に記載された残高を、
長期修繕計画書と照らし合わせることで、
より精度の高い評価が可能になります。
例えば、築15年のマンションで、
5年後に予定されている大規模修繕に2億円必要とされているのに、
現在の積立金残高が5,000万円しかない場合、
この差額をどう埋めるのかが問題となります。
多くの場合、修繕積立金の大幅な値上げか、
住民から一時金を徴収することになり、
投資収益を圧迫する要因となるのです。

理想的なのは、長期修繕計画に記載された
必要額の7割以上が既に積み立てられている状態です。
この水準を維持しているマンションは、
将来的な追加負担のリスクが低く、
安定した投資対象といえるでしょう。

2.管理費収支が語る日常管理の実態
管理費会計を見る際は、単に黒字か赤字かだけでなく、
その内訳にまで踏み込んで分析することが重要です。

収入面では、管理費の徴収率に注目します。
未収金が恒常的に発生している場合、
それは住民のモラルや経済状況に何らかの
問題を抱えている可能性を示唆しています。

一方、支出面では、管理委託費、清掃費、
設備保守費などの配分を確認します。
特に管理委託費が収入の70%を超えているような場合は、
管理会社への依存度が高すぎる可能性があり、
コスト削減の余地を検討すべきでしょう。

健全な管理費会計では、収支が均衡しているか、
若干の黒字を維持し、
かつ必要な管理業務に適切な予算が配分されている状態が理想的です。
これにより、日常的な管理の質を維持しながら、
突発的な支出にも対応できる余力を持つことができるのです。

3.繰越金推移が示す財務運営の巧拙
繰越金の推移は、
そのマンションの財務運営の巧拙を判断する上で極めて重要な指標となります。
過去3年分の決算報告書を並べて繰越金の推移を確認することで、
管理組合の運営能力が浮き彫りになってきます。

繰越金が年々増加している場合、
それは収支管理が適切に行われ、
計画的な運営がなされている証左です。
このようなマンションは、
予期せぬ支出にも柔軟に対応でき、
長期的な資産価値の維持が期待できます。

反対に、繰越金が減少傾向にある場合は要注意です。
特別な理由もなく繰越金が減っているということは、
収入不足か支出過多の構造的な問題を抱えている可能性があります。
このような傾向が続けば、いずれ管理費の値上げや
借入れといった対策が必要となり、
投資収益に悪影響を及ぼすことになるでしょう。

4.収支計算書で見抜く運営の透明性
収支計算書は収入と支出の詳細な内訳が記載されており、
お金の流れを具体的に把握することができます。

収入の部では、管理費や修繕積立金の徴収状況に加え、
駐車場使用料や携帯電話基地局の設置料など、
その他の収入源についても確認します。
多様な収入源を持つマンションは、
財務的な安定性が高いといえるでしょう。

支出の部では、各費目の妥当性を精査します。
例えば、「雑費」や「その他費用」といった曖昧な項目に
多額の支出が計上されている場合、
使途が不明瞭である可能性があります。

また、同規模のマンションと比較して
特定の費目が突出して高い場合は、
その理由を確認する必要があるでしょう。

5.貸借対照表が映し出す財務体質
貸借対照表は、資産と負債のバランスを見ることで、
そのマンションが健全な財務基盤を持っているかどうかを判断できます。

資産の部では、現金および預金の額に注目します。
これらの流動資産が豊富にあるマンションは、
緊急時の対応力が高く、安定した運営が期待できます。

一方、負債の部では、借入金の有無とその内容を確認します。
大規模修繕のための計画的な借入れであれば問題ありませんが、
日常的な運営資金の不足を補うための借入れは、
構造的な問題を示唆しています。

理想的な貸借対照表は、十分な流動資産を持ち、
負債が最小限に抑えられている状態です。
純資産がプラスで推移し、
年々増加傾向にあるマンションは、
財務的に健全であり、
期的な投資対象として適しているといえるでしょう。

6.修繕履歴と計画の整合性が示す管理の実効性
決算報告書に記載された修繕費の支出と、
長期修繕計画書に記載された予定を照合することで、
管理組合が計画を着実に実行しているかどうかを確認できます。
この整合性は、管理の実効性を測る重要な指標となります。

計画通りに修繕が実施されているマンションは、
建物の劣化を最小限に抑え、資産価値を長期的に維持することができます。
一方、財政難を理由に修繕を先送りしているマンションは、
将来的により大きな修繕費用が必要となり、
結果的に住民の負担が増大する悪循環に陥ります。

7.未収金が警告する潜在的リスク
未収金の項目は、マンション全体の潜在的なリスクを示す重要なシグナルです。
管理費や修繕積立金の未収金が恒常的に発生している場合、
それは単なる一時的な滞納ではなく、
構造的な問題を抱えている可能性があります。

未収金の割合が全体の5%を超えている場合は要注意です。
このレベルになると、管理組合の資金繰りに影響を与え始め、
計画的な運営に支障をきたす可能性があります。

健全なマンションでは、未収金はほぼゼロか、
あっても一時的なものに留まっています。
管理組合が滞納者への対応を適切に行い、
問題を早期に解決する体制が整っているかどうかも、
重要な評価ポイントとなります。

8.予算と実績の乖離が教える計画力
予算と実績の差異は、
管理組合の計画立案能力と実行力を測る重要な指標となります。

予算と実績がほぼ一致しているマンションは、
現実的な計画を立て、それを着実に実行できる
優れた管理体制を持っています。

一方、予算と実績に大きな乖離がある場合、
それは計画の甘さか、
予期せぬ事態への対応力不足を示しています。
特に、支出が予算を大幅に上回る傾向が続いている場合、
将来的な資金不足のリスクが高まります。

逆に、必要な支出を削って予算内に収めているケースも問題です。
これは短期的には黒字に見えても、
メンテナンス不足による資産価値の低下を招く可能性があるのです。

9,まとめ
これら8つのチェックポイントを総合的に評価することで、
決算報告書からマンションの真の姿が見えてきます。
重要なのは、各項目を個別に見るだけでなく、
相互の関連性を理解し、全体像を把握することです。

決算報告書は、マンションという生き物の健康診断書です。
これを正しく読み解く力を身につけることで、
分譲マンション投資の成功確率は格段に高まるはずです。

ABOUT ME
渡邊浩滋
大家さん専門税理士事務所、渡邊浩滋総合事務所代表。当サイトを運営する大家さん専門税理士ネットワーク「Knees(ニーズ)」代表。 自らも両親から引き継いだアパートを経営する大家であり、「全国の困っている大家さんを助けたい」という夢を叶えるべく日々奔走している。 全国でのセミナー出演、コラム執筆等多数。
さらに詳しく知りたい方へ