2017 年9 月個人事業主として開業しました。なお、開業費計上期間は2017 年1 月~8 月(開業開始前まで)で、事業割合は面積割合から2 割程度を予定しております。
(1)「自宅兼事務所の減価償却費」の開業費への計上可否(2017 年1 月~8 月)
・開業以前の「1~8 月分を準備費用として開業費」として計上することは可能でしょうか?また、可能な場合には経理処理方法は繰延資産として処理可能でしょうか?
・開業費への計上が不可な場合は、開業前の1~8月分を2017年の減価償却費として計上することは可能でしょうか?
(2)外壁塗装工事の開業費への計上
(1)の自宅兼事務所を2017 年4 月に外壁塗装工事を実施しました(160万円程度)。
・本件について事業割合分を開業費に計上することは可能でしょうか?
・不可能な場合、2017 年分として事業割合分を修繕費として計上することは可能でしょうか?
(3)自宅兼事務所の光熱費(2017 年1 月~8 月)
開業費として、事業割合分を計上することは可能でしょうか?
A
自宅事務所の経費計上ですが、まず自宅のうち事務所として使用している部分の減価償却費や光熱費を経費計上できるかどうかについて説明します。自宅事務所のように、経費が生活部分と事業部分が混在するものを家事関連費といいます。家事関連費が必要経費にできる要件は、以下のように規定されています。
< 白色申告の場合 >
① 主たる部分が業務の遂行上必要であること、かつ、
② その部分が明らかにできること
< 青色申告の場合 >
取引の記録等に基づいて業務の遂行上必要であったことが明らかにされること
青色申告でも白色申告でも、「 業務に必要という部分が明らか 」にされていないと経費にはできないということです。これについて、平成25年10月17日東京地裁で納税者が敗訴した事案があります。保険代理店事業を行っていた個人が、自宅兼事務所の家賃のうち、1階のリビングダイニング( 25㎡ )と2階の洋間3室のうち1室( 9㎡ )を事務所分として、これらの面積に相当する家賃を必要経費にしていたが、認められませんでした。裁判所は、「 建物の構造上、住宅の一部を居住用部分と事業用部分とに明確に区分することができる状態にないことは明らかである 」ことから必要経費にはならないと判断しました。
ここで重要なのは
(1)建物の構造上、自宅部分と賃貸部分を明確に区分できるかどうか
(2)事務所部分で明確に事業を行っているといえるかどうか
がポイントになります。
上記が明確にできるのであれば、開業費に計上することも可能です。(外壁修繕は、事業部分を明確に区分することは難しいと考えますので、開業費にも経費にすることも難しいと考えます)ただし、明確に区分できなくても、ある程度の割合を経費にしている人がいることは事実です(税務署とまともに戦ったら負けますが)。小さな経費部分は見過ごされていることもあります。しかし、開業費に計上すると、金額も大きくなり、繰延資産として計上されることなるため、非常に目立ちます(特に、賃貸経営については本当に開業準備が必要だったのか疑われやすい業種です)。
結論を申し上げると、開業前の自宅事務所に係る経費については、開業費(経費計上を含む)に計上することはおすすめしません。(もちろん、計上ができないわけではありません)