個人名義のアパートの建物を、法人を設立して、法人に売買しようと思って
います。
移転登記しなくても、家賃収入を法人に計上してもよいと聞きました。
そんなことできるのでしょうか?
登記しなくてよいのであれば、登記費用かからなくて済むので助かります。
A
民法では、売買の成立は、当事者間の意思表示の合致によります。
つまり、口頭であっても、合意があれば、売買契約は成立するのです。
不動産登記(権利登記)は、権利を主張するための対抗要件であって、成立要件
ではありません。
また、登記をしなければならない義務もありません。
一方、税法では、「実質課税の原則」というものがあります。
《所得税法12条 抜粋》
「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が
単なる名義人であつて、その収益を享受せず、
その者以外の者がその収益を享受する場合には、
その収益は、これを享受する者に帰属する」
収益の帰属は、名義だけで判断するのではなく、実質的な所有者に帰属するという
ことです。
民法上でも、税法上でも、名義は関係ないと言っているため、名義変更せずに
法人に家賃収入を計上してよいと考えることも可能です。
こちらについては、様々な意見があると思いますが、私は移転登記をすることを
お勧めします。
過去の裁判で、
公正証書による贈与契約書のみで、不動産登記をせず贈与を成立させて、贈与税
の時効を主張して、争った事例の判決では、
「不動産贈与契約公正証書の作成目的と受贈者の認識に焦点を当て、単なる租税
回避目的の書面にすぎない。
本件公正証書によって書面による贈与がなされたものとは認められず、(中略)
登記手続がなされた時点で不動産を贈与に基づき取得したとみるべきである」
と判断しています。
上記の判例のように
不動産登記手続きをしないことが、租税回避と判断される可能性もあることから
そのリスクを排除するためにも、登記を備えておくべきと考えます。