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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第432回】賃貸経営のプロ廣田 裕司が斬る!③

築30年、物件の岐路―建替えか、修繕か

こんにちは。大家兼不動産屋の廣田です。

前回のつづきになります。
5.建替えを検討する
築30年を迎えると、
木造や軽量鉄骨造の建物は、
建替えを検討する時期に入ると思います。
また、重量鉄骨造、
鉄筋コンクリート造の建物では、
建替えにはやや早いタイミングとも言えますが、
建物は永遠に使えるわけではなく、
いずれ建替えは必要になります。

建替えは、老朽化した賃貸物件を再生し、
収益性を高める有効な手段です。
耐震性や省エネ性能、
設備面で現代のニーズに応えられる建物に更新できるため、
賃料や稼働率の向上が見込まれます。
また、修繕コストの削減や資産価値の
向上といったメリットもあります。
一方で、初期投資が1億円を超えることもあり、
収入ゼロの期間や長期ローン返済、入居者退去調整、
空室リスクなど、経営上の負担も大きくなります。
建替えは将来の資産形成に向けた重要な経営判断であり、
安易に進めるのではなく、
資金計画と市場分析を踏まえた慎重な判断が求められます。

6.建替えを検討するポイント
(1)既存の入居者の退去と退去費用
建替えを実施するためには、
既存の入居者に退去してもらう必要があります。
退去を依頼する場合は、
少なくとも6カ月以上前に通知する必要があります。
普通借家契約では、大家都合の解約には正当事由が必要です。
老朽化による建替えは正当事由とされにくく、
立ち退き料や引越費用の負担が求められます。
立ち退き料などの退去費用も含めて
資金計画を検討する必要があります。
退去費用を軽減するためには、
定期借家契約が有効です。
建替えを見据えて数年前から新規入居者との契約を定期借家とすることで、
立退料を回避しやすくなります。
建替えは計画的に準備することが重要です。

(2)収入ゼロ期間
建替え工事中は当然ながら家賃収入がゼロとなります。
また、既存の入居者の退去が段階的になることで、
工事着工前から家賃収入は徐々に減少します。
収入が途絶えても、固定資産税や管理費、建築業者への支払い、
退去費用などの支出は継続します。この期間に備えて、
自己資金を確保しておくことが不可欠です。

(3)どんな物件を建てるのか
地域の需要に応じて、
単身向けの1K・1LDKかファミリー向けの2LDK以上を選定します。
物件の規模や構造は、敷地面積や法令上の制約を受けます。
また、内外装の仕様、設備仕様は、建築費や管理費に直結し、
採算性とのバランスが鍵です。

(4)資金計画
建替えを実施する場合、解体費、建築費、登記費用、
火災保険料のほかに、既存の入居者の退去費用が必要になります。
建て替えに必要な資金は、融資で調達することが可能ですが、
一部は融資対象外であるため、
自己資金による対応が求められる場面も多くあります。
また、収入ゼロ期間の出費に対応する資金も必要になるため、
十分な運転資金を準備する必要があります。

ABOUT ME
廣田裕司
〇空室相談、賃貸経営全般 有限会社丸金商事 取締役 合同会社アップ 代表社員 大学卒業後、メーカーに勤務、主に土木、建築資材営業 生産管理を経験。2001年に妻の実家の賃貸事業をベースに、有限会社丸金商事を設立。同社の取締役に就任し、(当時は兼業)賃貸経営の関わるようになる。2008年に相続により同社代表取締役に就任。翌2009年の会社を退職し専業となる。現在までに3回 新築物件(6棟、27戸)を手がけ、12棟90戸所有。2019年合同会社アップ設立。
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