『賃貸オーナー向けの火災保険について』
こんにちは。ファイナンシャル・プランナーの駒崎です。
今週のテーマは、
「漏水事故は突然に“所有者賠償特約”で管理リスクに備える」です。
賃貸オーナーの皆さま
物件管理中に起きる事故の中でも、特に頻度が高く、
損害も深刻になりがちなのが「漏水事故」です。
例えば、浴室の排水詰まりによるオーバーフローや、
給湯器の故障による水漏れ、上階からの浸水など…。
いずれも入居者や管理者の過失により発生するケースが多く、
損害賠償請求に発展するリスクがあります。
また、トラブルの相手が入居者同士であっても、
管理責任が問われ、オーナー自身が
損害賠償請求の矢面に立つ可能性も否定できません。
◆ 実際に起きた漏水事故の事例
上階の入居者が浴室の水を溢れさせ、
下階の天井・壁・家財にまで浸水したというケースでは、
マンション居住者包括賠償特約により、
665万円の保険金が支払われました。
また別の事例では、加害者も被害者も入居者という状況において、
賃貸人(大家さん)が双方の調整役となり、入居者(加害者)の
個人賠償責任保険特約と賃貸人(大家さん)の
マンション居住者包括賠償特約の使い分けを
判断する必要に迫られました。
このように、事故の直接原因が入居者の過失であっても、
建物の設備や管理体制に起因する損害であれば、
オーナーに責任が及ぶケースがあります。
◆ 火災保険にセットすべき「賠償特約」とは
火災保険では、以下の2つの特約を組み合わせて
備えることが推奨されています。
【1】賃貸建物所有者賠償(示談代行なし)特約
建物の保守・管理の不備によって、
入居者や第三者に損害を与えた場合に補償されます。
たとえば、エントランスの自動ドアが
誤作動し入居者がケガを負った事例では、
約115万円の保険金が支払われています。
【2】マンション居住者包括賠償特約
賃貸マンションの全入居者を対象に、
日常生活での賠償事故による損害を補償。
漏水、落下物、火の不始末など、
入居者起因の事故をまとめて
包括補償できるのが特長です。
◆ 示談交渉サービス付きで、トラブル対応も安心
万が一賠償事故が発生した場合、
契約者(オーナー)の申し出により、
保険会社が示談交渉を代行します。
これにより、煩雑で精神的負担の大きい対応を委任でき、
スムーズかつ円満な解決が図れるという安心感があります。
※ただし、相手方が交渉に応じない場合など
一部ケースでは対象外となることもあるため、
契約内容の確認が重要です。
◆ 賃貸経営に“不可避のリスク”を保険で回避するために
漏水や賠償事故は、オーナーの過失がなくても
発生し得る“避けられないリスク”です。
放置すれば法的責任に発展し、
訴訟・修繕・退去など、物理的・金銭的ダメージだけでなく、
オーナーとしての信頼喪失にもつながりかねません。
「賃貸建物所有者賠償特約」と「居住者包括賠償特約」の
2つを備えることで、オーナー自身の経営リスクも、
入居者の安心も守ることができるのです。
次回(第4回)は、設備のトラブルや電気系統の故障を補償する
「機械設備特約」についてご紹介します。
想定外の修繕費用を保険でカバーする、最後の守りを解説します。
