渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第234回
相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。
Q相続人が死亡保険金を受け取った場合には、
相続税の非課税枠があって、相続税は課税されないと聞きました。
しかし、所得税はかかるのでしょうか?
かかる場合があるとすればどのような場合でしょうか?
A
1.一時金で受け取る場合は所得税がかからない
被相続人(亡くなった方)が保険料を負担し、
被相続人自身を被保険者とする
生命保険契約にもとづいて相続人が死亡保険金を受け取った場合、
その保険金は税法上「みなし相続財産」として取り扱われます。
つまり、死亡保険金は民法上の相続財産ではありませんが、
実質的に相続により取得した財産と同様の性質を持つことから、
相続税の課税対象となるのです。
一方、所得税法では「相続、遺贈又は個人からの贈与により
取得するもの」については所得税を課さない旨が
明確に定められています(所得税法9条1項16号)。
この規定は、相続税や贈与税の課税対象となる財産について、
所得税との二重課税を避けるために設けられたものです。
したがって、死亡保険金を一時金で受け取った場合には、
相続税の課税対象にはなりますが、所得税は一切課税されません。
2.年金形式で受け取る場合は所得税がかかることがある**
では、死亡保険金を一時金ではなく年金形式で
分割して受け取ることを選択した場合はどうでしょうか。
この場合には、相続税に加えて所得税が課税される部分が生じます。
まず相続税についてですが、年金形式で受け取る場合には
「年金受給権」、すなわち将来にわたって年金を受け取る権利
そのものが相続財産として評価され、
相続発生時に相続税が課税されます。
この評価は相続税法24条に定める「定期金に関する権利」の
評価方法に従い、年金総額を一定の利率で割り引いた現在価値として算出されます。
なお、受取人が法定相続人である場合には、
一時金受取と同様に500万円×法定相続人数の非課税枠が適用されます。
次に所得税についてですが、
年金受給権に対して相続税が課された後、
実際に毎年受け取る年金については雑所得として所得税の課税対象となります。
ただし、すべての金額に課税されるわけではありません。
相続税の課税対象となった元本部分(年金受給権の現在価値に相当する部分)には
所得税は課税されず、それを超える運用利息に
相当する部分のみが課税対象となる仕組みです。
具体的には、年金で受け取る総額のうち
被相続人死亡時の現在価値に相当する部分を非課税部分、
それを超える部分を課税部分として区分します。
初年度の年金支給額は死亡時点の現在価値に
相当するとみなされるため全額が非課税となり、
2年目以降は徐々に課税部分の割合が増えていきます。
課税部分の金額 = 支払金額 × 課税割合
課税割合は、相続税評価割合に応じ、
それぞれ次のとおりです。
<算式>相続税評価割合 = 相続税評価額 ÷ 年金の支払総額または支払総額見込額
この計算方法により、
各年の年金受取額を非課税部分と課税部分に按分し、
課税部分についてのみ雑所得として所得税を計算することになります。
3.最高裁判決による二重課税問題の解決
現在のこのような取扱いが確立された背景には、
平成22年の最高裁判決があります。
かつては年金形式で死亡保険金を受け取った場合、
年金支払時に受取額から保険料負担額を差し引いた
全額が雑所得として課税されていました。
これにより、相続税と所得税の実質的な
二重課税が生じているとして問題視されていたのです。
この点について、
最高裁判所は平成22年7月6日判決において重要な判断を示しました。
判決では、「遺族が年金の形で受け取る生命保険金について、
被相続人死亡時の現在価値部分
(すでに相続税の課税対象となった部分)は
所得税の課税対象とならない」と判示し、
相続税で課税済みの部分に重ねて所得税を
課すことは二重課税に当たるとして、
課税処分を取り消しました。
この判例を受けて国税庁は通達等を改正し、
年金払いの生命保険金については
相続税課税部分を所得税非課税とし、
残りの運用利息部分のみを課税する
現在の取扱いへと改められました。
また、年金開始前に年金受給権を
一時金に転換して受領した場合には所得税を課さないとの取扱いも、
所得税基本通達9-18により確認されています。
4.まとめ
相続税が課税される財産は、
それが非課税になっても、
所得税が課税されることはありません。
しかし、一時金で受け取る年金形式で受け取るか、
その受取方法によって所得税が課税されるかどうかが異なります。
保険金の受取方法を選択される際には、
このような税負担の違いも考慮されるとよいでしょう。
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