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親の土地で子が賃貸経営―小規模宅地の特例は誰が相続するかで変わる?

渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第237回

相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。

Q小規模宅地の減額について教えてください。
父所有の土地の上に、長男が建築したアパートがあります。
長男は父から使用貸借契約で土地を借りています。
長男と次男はともに、父と同一生計親族です。
この父の土地を、長男が相続した場合と、次男が相続した場合に、
賃貸用の小規模宅地の減額を受けられますか?
長男か次男かが相続するかによって違いがあるのでしょうか?

A
1. 貸付事業用の小規模宅地の減額
小規模宅地等の特例のうち「貸付事業用宅地等」に該当すると、
200㎡までの部分について相続税評価額を50%減額することができます。

この特例は、
被相続人自身がその土地で貸付事業を営んでいた場合に適用されるのが
典型的なパターンですが、それだけではありません。

被相続人と生計を一にしていた親族が
その土地で貸付事業を営んでいた場合も、特例の対象となります。

ご質問のケースでは、父(被相続人)は
長男から地代を受け取っていないため、
父自身が貸付事業を営んでいたとは認められません。

しかし、長男は父と同一生計親族であり、
父の土地の上で自らアパート賃貸業を営んでいます。

そのため、この土地は「被相続人と生計を一にしていた
親族の貸付事業の用に供されていた宅地」として、
特例の適用対象となり得ます。
ただし、実際に特例の適用を受けられるかどうかは、
誰がその土地を相続するかによって結論が異なります。

2. 貸付事業をしている長男が相続した場合
長男が父の土地を相続した場合は、
貸付事業用宅地等の特例を受けることができます。

貸付事業用宅地等の特例を受けるためには、
その土地を相続した人が、
相続税の申告期限までその貸付事業を継続し、
かつその土地を保有し続けていることが要件とされています。

長男はもともと自分自身でその土地上のアパート賃貸業を営んでいました。
相続によって土地の所有権を取得した後も、
長男は引き続き同じ賃貸事業を継続することになります。

これはまさに「自己の貸付事業を継続している」状態ですので、
事業継続要件を満たします。土地を申告期限まで保有していれば、
50%減額の特例適用を受けることができます。

3. 貸付事業をしていない次男が相続した場合
一方、次男が父の土地を相続した場合は、
貸付事業用宅地等の特例を受けることができません。

次男はその土地上でアパート賃貸業を営んでいたわけではありません。
アパートの建物所有者は長男であり、
賃貸事業を行っているのも長男です。

次男が土地を相続したとしても、
次男自身がその貸付事業を承継して継続することはできません。

次男にできることは、
相続後も引き続き長男に土地を無償で貸す
(使用貸借を継続する)ことです。

しかし、使用貸借で土地を貸すだけでは地代収入がないため、
次男が貸付事業を営んでいるとは認められません。
つまり、次男は貸付事業の継続要件を満たすことができないのです。
では、次男が相続後に長男から地代を受け取る形に変更すればどうでしょうか。

この場合でも、残念ながら特例の適用は受けられません。
貸付事業用宅地等の特例は、相続開始の直前から
申告期限まで引き続き貸付事業を継続していることが要件です。

相続後に新たに地代を受け取り始めたとしても、
相続開始の直前において次男は貸付事業を営んでいなかったわけですから、
「引き続き継続」という要件を満たさないのです。

さらに、そもそも親族間で地代の授受を始めること自体にも問題があります。
権利金の授受がない個人間の土地賃貸借では、
借地権相当額が長男に贈与されたものとみなされ、
贈与税が課税される可能性があります。
このリスクを考えると、
相続後に地代を受け取る形に切り替えるという方法は現実的ではありません。

4. まとめ
同一生計親族の貸付事業用の宅地については、
誰が相続するかによって小規模宅地等の特例の適用可否が変わりますので、
遺産分割の際には十分ご注意ください。

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ABOUT ME
渡邊浩滋
大家さん専門税理士事務所、渡邊浩滋総合事務所代表。当サイトを運営する大家さん専門税理士ネットワーク「Knees(ニーズ)」代表。 自らも両親から引き継いだアパートを経営する大家であり、「全国の困っている大家さんを助けたい」という夢を叶えるべく日々奔走している。 全国でのセミナー出演、コラム執筆等多数。
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