わかる投資判断ポイント
~分譲マンション投資の魅力~
長期修繕計画を見るにあたって、
大規模修繕工事の知識をある程度持っていた方がよいでしょう。
国土交通省が令和3年度に実施した
「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」は、
全国818件の大規模修繕工事を対象とした貴重なデータです。
今回は、この調査結果から
投資家として押さえておくべきポイントを解説します。
1.修繕周期の実態:12〜15年が7割を占める
まず、大規模修繕工事がどのくらいの頻度で行われているか。
調査によると、平均修繕周期は「13年」が最も多く、
全体の約7割が12〜15年周期で実施されています。
興味深いのは、工事回数が増えるほど
周期が短くなる傾向があることです。
1回目の平均修繕周期は15.6年ですが、
2回目は14.0年、3回目になると12.9年まで短縮されています。
これは建物の経年劣化に加え、
既存の防水材や塗装の耐久性が新築時より
低下していることが要因と考えられます。
投資家として重要なのは、
この周期を前提にキャッシュフローを計算することです。
築15年の物件を購入したら、間もなく1回目の大規模修繕が
控えている可能性が高い。
築30年なら2回目が終わっているか、
まさに実施中かもしれません。
購入前に修繕履歴を確認し、
次回工事までの期間を見極めることが不可欠です。
2.工事金額の相場
では、実際にいくらかかるのでしょうか。
調査では、戸あたり工事金額として「100〜125万円」の割合が最も高く、
次いで「75〜100万円」「125〜150万円」となっています。
中央値で見ると、1回目が110.2万円、
2回目が106.1万円、3回目以上が97.0万円です。
床面積あたりで見ると、「1.0〜1.5万円/㎡」が最多で、
全体の約33%を占めています。
70㎡のファミリータイプであれば、
単純計算で70〜105万円程度が目安となります。
ただし、これはあくまで平均値です。
工事回数が増えると工事内容も変化します。
1回目は外壁塗装や防水工事が中心ですが、
3回目以降になると設備系工事の割合が増加し、
建具や金物の交換、共用部内装の更新なども加わります。
総工事金額で見ると、
1回目の中央値は8,665万円、3回目以上では
8,703万円とほぼ同水準ですが、
工事内容の複雑さは大きく異なるのです。
3.工事内訳から見える優先度
建築系工事の内訳を見ると、
工事回数によらず「外壁塗装」の割合が最も高く、
全体の約25%を占めています。
次いで「床防水」が約19%、
「屋根防水」が約13%と続きます。
注目すべきは、工事回数が増えるにつれて
「外壁タイル」の割合が高まる点です。
1回目では7.1%に過ぎませんが、
2回目では10.5%、3回目以上では18.5%まで上昇します。
タイルの浮きや剥離は築年数とともに進行するため、
補修範囲が広がるのは当然の結果といえます。
逆に「建具・金物等」は1回目で15.3%と高い割合を示しますが、
3回目以上では1.9%まで低下します。
これは、1回目で主要な建具が更新され、
その後は塗装や防水といった躯体保全工事に重点が移るためと考えられます。
4.投資判断への活かし方
最も重要なのは、
「戸あたりの修繕積立金がどのくらい貯まっているか」
を確認することです。
調査結果から、
大規模修繕工事には戸あたり75〜125万円程度
かかることがわかりました。
つまり、次回の大規模修繕までに
この金額が積み立てられている必要があります。
決算報告書で修繕積立金の残高を確認し、
総戸数で割れば戸あたりの積立額が算出できます。
例えば、築10年で戸あたり
積立残高が50万円のマンションがあったとします。
1回目の大規模修繕は平均15.6年で実施されていますから、
残り5〜6年で追加で50万円以上を積み立てる必要があります。
現在の月額修繕積立金で足りるのか、
それとも値上げが必要なのか。
この計算ができれば、将来の追加負担リスクを見極められます。
逆に、築30年で2回目の大規模修繕を終え、
戸あたり積立残高が80万円以上あるマンションは、
財務的に健全な状態といえます。
5.まとめ
大規模修繕工事は、
マンションの資産価値を維持するために不可欠な投資です。
修繕周期は12〜15年が標準、
戸あたり工事費は100万円前後が目安。
この数字を頭に入れておくだけで、
長期修繕計画書を見る目が変わります。
適切なメンテナンスが行われている物件は、
築30年、40年でも十分な資産価値を維持できます。
逆に、修繕を怠った物件は、
どんなに立地が良くても資産価値の下落を免れません。



