ブログ

法人所有の賃貸物件の1室を社宅で利用。相続税評価で賃貸の減額できる?

渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第242回

相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。

Q法人が所有する賃貸マンションの1室を代表者が社宅として利用しています。
この場合、法人の株価の相続税の計算にあたって、
この不動産は貸していることの減額(貸家建付地評価)で評価できるのでしょうか?

A
社宅として利用している部分については、原則として貸家建付地評価は適用できず、
自用地評価となります。
ただし、契約内容や賃料水準など一定の条件を整えることで、
貸家建付地評価が認められる余地もあります。

1.法人の株価計算における不動産評価の基本
非上場会社の株式を相続税で評価する場合、
純資産価額方式では、法人が保有する資産を相続税評価額で評価し直します。

法人が賃貸用不動産を所有していれば、通常、
土地は貸家建付地として評価され、建物は貸家として評価されます。

貸家建付地の評価額は、
「自用地評価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」で計算されます。
借家権割合は全国一律30%ですので、
たとえば借地権割合が60%の地域で満室稼働(賃貸割合100%)であれば、
自用地評価額から18%の評価減が受けられることになります。

しかし、この評価減を受けるためには、
その建物が「借家権の目的となっている」こと、
すなわち借地借家法の適用を受ける
賃貸借契約に基づいて第三者に貸されていることが前提です。
この前提を満たさない場合には、
貸家建付地評価ではなく自用地評価となり、
評価減を受けることはできません。

社宅として利用している1室が借家権の対象とならない場合、
その部分は賃貸割合の計算から除外されます。

たとえば、10室のマンションで1室を社宅利用している場合、
賃貸割合は90%となり、
貸家建付地の評価減も全体として小さくなります。

2.社宅の敷地が貸家建付地にならない理由
社宅とは、法人が従業員や役員の福利厚生として用意する住居です。

一般的な賃貸借契約とは異なり、
社宅の利用は「その会社の従業員(役員)であること」を
前提としており、
退職した場合には速やかに明け渡すことが原則です。

このような社宅特有の性質から、
入居者には借地借家法上の借家人としての
保護が及ばないと解されています。

通常の賃貸借契約であれば、
貸主が更新を拒絶するには「正当事由」が必要ですが、
社宅の場合は雇用関係(役員の場合には、委任契約)の
終了によって当然に明け渡しが求められます。
つまり、借家権が発生しないのです。

国税庁タックスアンサーでも、
「借地借家法の適用がない社宅の敷地」については
貸家建付地として評価せず、
自用地として評価するとしています。

3. 貸家建付地評価を適用するための条件整備
それでは、社宅として利用している部分について
貸家建付地評価を受けるためには、
どのような条件を整える必要があるのでしょうか。

(1)適正な賃料水準の設定
最も重要なのは、賃料を適正な水準に設定することです。
社宅の特徴は、相場の賃料よりも安く賃貸できていることです。

周辺の類似物件とほぼ変わらない水準であれば、
実質的にも一般の賃貸とみなせるため、
貸家建付地として評価できる可能性が高まります。

(2)賃貸借契約の内容の整備
賃料水準だけでなく、契約内容も重要です。
たとえ法人社宅であっても、
貸主と入居者の間で通常の賃貸借契約と同様の条項
(賃貸期間、更新条件、解約通知期間等)を
盛り込んだ契約を締結し、借家人としての
権利義務を明確にしておくことが求められます。

特に注意すべきは、
「従業員(役員)でなくなった場合は即退去」
といった社宅特有の制約条項をつけないことです。
このような条項は借家人の権利制限につながり、
借家権が存在しないことの根拠とされかねません。
雇用関係(役員の場合には委任関係)と
切り離した純粋な賃貸借契約の形を整え、
契約当事者を法人と役員個人が独立して
契約していることが重要です。

(3)継続的な賃貸実態の立証
相続税評価の時点で賃貸の実態が継続していることも必要です。
相続直前だけ形だけ賃料を受け取ったような
ケースでは説得力に欠けます。
少なくとも相続開始より数年前から賃貸借が継続していること、
賃料の授受や契約更新が適切に行われていることを示す記録
(契約書、領収書、振込記録等)を保管しておくことが重要です。

4.まとめ
法人所有の賃貸マンションの1室を代表者が社宅として
利用している場合、原則として、
その部分は貸家建付地評価ではなく自用地評価となります。

ただし、条件を整えることで、
貸家建付地評価が認められる余地もあります。
同族会社と役員との間の賃貸借契約では、
国税当局が取引の実態を厳しくチェックしていますので、
形式と実態の整合性を確保することが重要です。

社宅の取扱いは判断が難しいグレーゾーンを含むため、
早めに税理士等の専門家に相談し、
契約条件や賃料設定の見直しを検討されることをお勧めします。

《お知らせ》
1.税務相談ライブセミナー
私のYoutubeチャンネル「大家さんの知恵袋」で、
確定申告直前!『生税務相談会』開催
します。
Knees bee税理士法人の税理士が皆さまの
疑問質問にお答えします。
確定申告の疑問点を解消しましょう。

日時:2月6日(金)18:30~20:00(Youtube Live)
視聴用のURLはこちらです。
https://youtube.com/live/nY3CbqXAn6s?feature=share

2.恵比寿で相続セミナー
オーナーズスタイルさんのイベントで
『「大家さん専門税理士が経験をもとに語る!
節税や相続対策から考える資産形成戦略』
というテーマで話をします。

日時:2月7日(土)15:30~16:30
場所:EBIS303 イベントホール(エビススバルビル3階)
東京都渋谷区恵比寿1-20-8(JR恵比寿駅より徒歩3分)
費用:無料
詳細・お申し込みはコチラ
https://owners-style.net/s/sodankai/?top=panel#seminar

3.横浜で無料相談会の開催
Knees bee税理士法人の横浜サテライトオフィスを2025年6月から開設しました。
開設を記念して渡邊による無料税務相談会を開催します。
日時:2月15日(日)
場所:神奈川県横浜市西区北幸1-11-5
相鉄KSビル905 横浜駅9出口から徒歩3分
申し込み:
https://timerex.net/s/e.fukuoka.sogo_7397/084f3283

※完全予約制です。

ABOUT ME
渡邊浩滋
大家さん専門税理士事務所、渡邊浩滋総合事務所代表。当サイトを運営する大家さん専門税理士ネットワーク「Knees(ニーズ)」代表。 自らも両親から引き継いだアパートを経営する大家であり、「全国の困っている大家さんを助けたい」という夢を叶えるべく日々奔走している。 全国でのセミナー出演、コラム執筆等多数。
さらに詳しく知りたい方へ