税理士・司法書士の渡邊浩滋 の 賃貸経営税務相談メール
発行: 大家さん専門 税理士ネットワーク Knees bee
2026.6.23
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■ 税務相談質問箱
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今週のQ&A
Q1 会社にお金を貸すと、相続税はどうなる?
Q2 配偶者居住権を設定した自宅敷地。小規模宅地の特例は使える?
(Q1)会社にお金を貸すと、相続税はどうなる?
今私たちは、ある共有のアパートを売ろうとしています。
売れた場合、母は1,000万円以上の現金が手に入ることになります。
そのお金を会社に貸して、会社で不動産を買おうと計画しています。
それが実現すると、母には債権が残ることになります。
この状態でもし母が死亡した場合、相続税に関係するでしょうか?
(A1)
1.貸付債権は相続財産
結論から言うと、相続税はむしろ増えると予想されます。
注目していただきたいのは、お母さまの財産が「不動産(アパート)」から
「会社への貸付金」へ、形を変えるという点です。
流れを追うと、
アパート(持分)→ 売却 → 現金1,000万円超 → 会社へ貸付 → 貸付金債権
となります。
ここで効いてくるのが評価額の差です。
不動産は、土地は路線価、建物は固定資産税評価額で評価され、
賃貸中であれば借家権などの減額も入るため、
通常は時価よりかなり低く評価されます。
ところが貸付金債権は、
原則として額面(貸した金額)がそのまま評価額になります。
評価の低い「不動産」 → 評価の高い「貸付金」に変わったということです。
このように、せっかく評価が抑えられていた不動産を、
額面評価の貸付金に変えてしまうため、
相続税は下がるどころか増える可能性が高いのです。
2.残った貸付金の相続対策があります
何もしなければ、貸付金はそのまま相続財産になります。
会社に返済余力があるなら、返済を進めることをしましょう。
放置せず、少しずつでも返してもらい残高を減らします。
ただし、返済を受けると今度は現金が増えるので、
「返済すれば必ず相続税が減る」ことにはなりません。
相続税対策をするなら、
貸付金を生前贈与することがよいでしょう。
お母さまが持つ「会社への貸付金」を生前に
子などへ贈与すれば、お母さまの財産から外れます。
現金と違ってお金を動かす必要がなく、
贈与契約書を結ぶだけで済むのが利点です。
ただし、貸付金の贈与は「債権譲渡」に当たるため、
民法467条により、債務者である会社への
通知、または会社の承諾が必要になります。
おすすめは、確定日付のある承諾を取っておくことです。
3.暦年贈与より、相続時精算課税の110万円枠が有力
贈与する相手が子などの相続人の場合、
暦年贈与だと、相続開始前7年以内の贈与が相続財産に
加算されてしまいます(生前贈与加算)。
せっかく贈与しても、相続税で課税を受けてしまうのです。
一方、令和6年1月1日以後の相続時精算課税制度では、
年110万円以内の贈与であれば贈与税の申告
も不要で、相続直前(7年以内)の贈与でも
相続税の課税対象になりません。
ですので、貸付金を毎年110万円以内で少しずつ子へ移していくなら、
相続時精算課税の110万円枠
は非常に相性がよいのです。
ただし、相手が相続人でない孫であれば、
そもそも暦年贈与でも7年加算の対象外です。
この場合は通常通りの贈与(暦年贈与)で
贈与しておけばよいのです。
なお、相続時精算課税を初めて使うときは、
申告期限(3月15日)までに「相続時精算課税選択届出
書」の提出が必要です。
110万円以下で申告不要でも、
最初の届出だけは忘れないようにしてください。
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(Q2)孫を養子にすると、7年以内の贈与に相続税がかかる?
父に相続が発生しました。相続人は、母・長男・次男の3人です。
遺産分割協議で、自宅について母に配偶者居住権を設定し、
その配偶者居住権がついた土地(敷地)
は長男が取得することになりました。
生前、父・母・長男は同居していました。
この場合、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)は
適用できるのでしょうか。
適用できる場合、対象となる面積はどうなりますか。
自宅の敷地は400㎡です。
(A2)
結論から申し上げると、母・長男ともに適用でき、
合わせて限度面積330㎡まで80%減額を受けられます。
1.配偶者居住権を設定すると、土地は「2つの権利」に分かれる
配偶者居住権を設定すると、自宅の土地は次の2つに分解されます。
・敷地利用権:配偶者居住権にもとづいて土地を使う権利 (母が取得する分)
・敷地所有権:配偶者居住権という負担がついた土地の所有権(長男が取得する分)
敷地利用権は税務上「土地の上に存する権利」に当たるため、
小規模宅地等の特例の対象になります。
つまり、母が持つ敷地利用権も、
長男が持つ敷地所有権も、どちらも特例の対象になるのです。
2.適用要件を満たすか
母が取得する敷地利用権の部分は、
配偶者が取得するものですから、
特定居住用宅地等として無条件に
特例の対象になります。
配偶者には、同居していたか、
申告期限まで住み続けるか、
持ち続けるか、といった要件は一切課され
ません。
長男が取得する敷地所有権の部分は、
長男が同居親族に当たるかどうかで判定します。
ご相談のケースでは、
父・母・長男が同居していたとのことですので、
長男は同居親族に該当します。
あとは同居親族の要件
・相続税の申告期限まで、その土地を所有し続けること
・相続税の申告期限まで、引き続きその自宅に住み続けること
この2つを満たせば、
長男の敷地所有権部分も特定居住用宅地等として
特例の対象になります。
3.適用面積は「価額の割合」で按分してから判定する
敷地利用権と敷地所有権は、
それぞれの価額の割合で面積を按分し、
その按分後の「みなし面積」をも
とに限度面積(330㎡)を判定します。
計算式は次のとおりです。
◯母(敷地利用権)の面積
= 400㎡ ×(敷地利用権の価額 ÷ 敷地利用権と敷地所有権の合計価額)
◯長男(敷地所有権)の面積
= 400㎡ ×(敷地所有権の価額 ÷ 同上の合計価額)
たとえば、敷地利用権と敷地所有権の価額が「6:4」だったとすると、
・母の敷地利用権 → 400㎡ × 6/10 = 240㎡
・長男の敷地所有権 → 400㎡ × 4/10 = 160㎡
と分かれます。
合計すれば当然400㎡に戻ります。
4.どちらに適用すると有利か
母と長男のいずれも特定居住用宅地等に当たりますので、
両者の按分後の面積を合算して、限度面積330㎡
まで80%減額を適用します。
合計400㎡のうち330㎡分までが対象、残り70㎡分は減額なしです。
では、330㎡をどちらの権利に優先して充てるか。
実は、按分は価額の割合で面積を割り振るしくみのため、
みなし面積1㎡あたりの評価額は母・長男どちらも
同じになります。
したがって、単純な減額額だけを見れば、
どちらに充てても変わりません。
差が出るのは、配偶者の税額軽減との関係です。
母(配偶者)には、法定相続分か
1億6,000万円のいずれか多い額まで
相続税がかからない大きな軽減があります。
母の敷地利用権に小規模宅地を充てても、
もともと配偶者の税額軽減で母の税額が吸収されてしまえば、
減額の効果が二重に効くだけで活かしきれません。
一方、長男にはそうした軽減がありません。
長男の敷地所有権に80%減額を充てれば、
課税価格が直接下がり、相続税の総額を圧縮できます。
ですので、一般的には、
小規模宅地は長男(敷地所有権)に優先して適用するほうが有利です。
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