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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第二回】不動産鑑定士・住宅診断士
皆川 聡が斬る!②

住宅診断と不動産鑑定評価とのコラボによる有効な活用方法②

前回は、「建物評価に関する常識が変わりつつある。」ことを記載致しました。
今回は、融資を受ける際の、「住宅診断と不動産鑑定評価の具体的な活用方法」を
お伝えします。

1.融資と建物評価の今まで

前回記載しましたように、金融機関は、法定耐用年数に基づき行内査定をしてしまうことを説明致しました。また、不動産業者の方も、金融機関が融資してくれる法定耐用年数に基づき、同様に査定をしてしまう傾向にあります。
上記2者が、同じ法定耐用年数を基に査定などが行われ、「建物に係る市場における価値」がある意味決まってしまっています。

そのような市場の下、不動産鑑定士も「法定耐用年数にほぼ拘束され、金融機関及び不動産業者とともに、鑑定士も評価も横並びになってしまうというところに落ち着いてしまっていると言えます。

確かに、戦後復興から土地神話のバブルまでの時代であれば、ライフスタイルも大きく変わっていき、建物もスクラップアンドビルドでした。
ですので、建物については、法定耐用年数に基づく考え方でも、ある意味時代にあっていたと言えるので良かったかもしれません。

しかし、バブル以降ライフスタイルの大きな変更はなく、今ある建物は徐々に修繕なども築15年前後で施され、例えば20年程度経った建物は、十分に使用できるような建物も多いはずです。

2.適切に融資を受けるための具体的な方法

では、金融機関から、どのようにすれば、大規模修繕を施した、または、適切に維持管理しているような建物について、きちんと融資をもらえるようになるかを説明致します。

例えば、新築で2,200万円する築15年の木造のアパート
(耐用年数22年、残存耐用年数(残りの耐用年数)7年、建物価格700万円として)
に対して、今、外壁・屋根塗装などに大規模修繕を実施したとします。
(費用200万円)

話を簡単にするため、その修繕により、当該建物価格は900万円
(=700万+修繕費用200万)になったとします。
(場合によりましては、その施工の状態やその地域の賃貸需要によっては、1000万円を超えることも十分考えられます。)

今までの鑑定士の評価では、「外壁を塗ったのかな?」程度のところまでしか、一般的な不動産鑑定士は感じることができませんので、評価もできません。なので、鑑定士は合理的な説明ができないことは、価格に反映することができませんので、建物価格は700万円のままになってしまいます。

しかし、大規模修繕によって外壁や屋根など、本来の機能や効果を復活させた建物に対し、

① 住宅診断士等が、建物の物的な残存耐用年数の延長を認めた場合(物理的な延長)で、

かつ、

② 鑑定士が経済的な残存耐用年数の延長を認めた場合(経済的な延長)には、

当該価値の増分200万円を700万円に付け加えることができます。

また、

残存耐用年数も13年延びると判断した場合、
20年(=7+13年)の経済的残存耐用年数になります。

つまり、200万円の修繕により、

価値が700万円→900万円、耐用年数が7年→20年になります。

そうすると、そのような鑑定評価書を金融機関に持ち込むと、融資額がアップすると同時に、返済期間が延長されるというイメージになります。但し、このような評価を認めてくれる金融機関はまだ少ないのが実情です。

ですので、
① 住宅診断と不動産鑑定評価のコラボをした評価をしているのか
② そのような評価を認めてくれる金融機関なのか

それに加え、
③ 費用対効果の見極めが必要になります。
(住宅診断+鑑定)費用対(融資額UP、返済期間延長、金利等による)効果

さらに、できましたら、
④ 修繕履歴、明細も含めお手元にあった方が、その資料自体、エビデンスとして、価値増分などに強く働く傾向にあります。

にご留意いただき、ご活用されることをお薦めいたします。

このように、建物評価に対する常識が変わると同時に、融資の常識も変わるので、
今後の皆様の不動産投資などにお役立ていただきますと幸いです。

ABOUT ME
皆川聡
株式会社Aoi不動産鑑定 大手不動産鑑定会社に約8年従事し、メガバンク、政府系金融機関、地銀、信用金庫、信用組合などの金融機関の担保評価をメインに約2500件の案件を携わり、国際線ターミナルの評価の実績もあり。 退職後、平成27年4月に開業。 開業後は、税務対策の鑑定評価や裁判調停等の鑑定評価での多数実績。住宅診断を反映した鑑定評価にて、より清緻な鑑定評価を行っており、鑑定評価額だけではなく、皆様の建物の日ごろのメンテナンスのポイントなどもご提案し、ご好評をいただいております。また2020年10月には、相続税の還付請求にて、他の不動産鑑定士が国税不服審判所にて否認された案件を、その後当職が不動産鑑定を担当。圧倒的な不動産鑑定評価により、東京地裁において、国税庁との裁判で無事完全勝訴しております。
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