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リーゼント先生のやさしい相続
第二回「締め切り間際の教育資金一括贈与」

平成25年に導入されてから相続税の節税対策として積極的に活用がされてきた「直系尊属からの教育資金の一括贈与の非課税制度」ですが、延長されていた期限が来年3月31日で切れる予定になっています。
本稿では、制度の概要を振り返りつつ、適用に当たってのメリットとデメリットについても確認をしていきます。

1.教育資金一括贈与の贈与税非課税制度

平成25年4月1日から平成31年3月31日までの期間内に、直系尊属から贈与を受けた個人(両親、祖父母からの30歳未満の子、孫への贈与の場合が該当します。)が、教育資金に充てるため教育資金管理契約に基づき贈与等があった場合には、そのうち1,500万円を限度として、贈与税が非課税となる制度です。

2.非課税限度額

非課税限度額は、受贈者である子や孫1人につき1,500万円です。

原則として学校等に対して支払われる教育資金が対象となりますが、学校等以外の学習塾などへの教育資金についてもそのうち500万円までは適用対象となります。

なお、非課税限度額の範囲内にて追加適用を受けることも可能となっています。

3.教育資金

1,500万円の非課税の対象となる教育資金は、学校等に対して支払われたことが領収書等により確認をすることが出来るもので、以下のようなものをいいます。

・入学金、在籍料、授業料、入園料、保育料
・修学旅行・遠足費
・入学検定料
・在学証明書、卒業証明書、卒業見込証明書、成績証明書等の手数料
・PTA会費、学級会費、生徒会費、学校の寮費

また、学校等以外に対して支払われる500万円の非課税の対象となるものは、

・学習塾、家庭教師、そろばん教室、英会話教室、ビジネススクールの指導料
・TOEIC等の検定料、資格試験の受験料
・スイミングスクール、ゴルフスクール、テニススクール、野球チームの指導料
・音楽、絵画、バレエ、ダンス、習字、茶道、華道、将棋、囲碁、料理、乗馬教室などの指導料

などが該当します。

4.制度のメリットとデメリット

メリット デメリット
〇贈与者の生前贈与により相続税の節税となること

〇暦年贈与の基礎控除(暦年110万円)に比して有利であること(1,500万円>110万円)

〇非課税であるため、贈与者の相続に係る相続税において生前贈与加算の対象外であること

〇相続財産が基礎控除額以下であることから、無理に節税を行う必要性がなかったこと

〇贈与税申告、金融機関への領収書提出などの事務手続きを要すること

また、本制度の活用の検討に際しては、贈与税は扶養義務者相互間において通常必要と認められる教育費についてはそもそも非課税とされているのでこのことも含めて考える必要があります。

まとめ

本制度については、受贈者が30歳に達するまでに使い切れなかった部分の金額については、贈与税の課税対象とされることから、どの程度教育資金が必要となるかも踏まえて贈与額を検討しておきましょう。また、受贈者に兄弟姉妹がある場合は、後の火種とならない様によく話し合ってから行うことも必要と思われます。

現在、文部科学省が来年度の税制改正要望にて当該制度の恒久化措置と併せて年齢上限の引き上げなどを求めていますので、こちらも注視しつつ検討したいものです。

ABOUT ME
羽藤徹夫
税理士法人 大石会計事務所所属。 高校卒業後は主にガテン系の肉体労働に従事。体力の限界を感じ、税理士試験の勉強を開始。合格を機に税理士試験の受験専門学校へ転職。大原簿記専門学校で相続税法、法人税法の教鞭をとった経験を元に、相続税をやさしくわかりやすく解説。
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