結婚50年目は金婚式、25年目が銀婚式。では、20年目は・・・最近は、婚約指輪の前段階のプロポーズ用指輪があるぐらいですから、何かありそうですね。
本稿では、婚姻期間が20年以上の配偶者間での居住用不動産の贈与にかかる特例制度についてまとめていきます。
1. 贈与税の配偶者控除(配偶者間での居住用不動産を贈与した場合における配偶者控除)
婚姻期間が20年以上の配偶者の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、2,000万円を限度として贈与税の課税価格から控除(配偶者控除)をすることができる特例制度です。
具体的には、以下のような計算となります(贈与税の配偶者控除の適用を受ける要件の全てを満たしており、かつ、居住用不動産以外の贈与を受けていないことを前提としています。)
例①)居住用不動産1,500万円(相続税評価額)の贈与を受けた場合
1,500万円-※1,500万円=0(贈与税の課税価格)
※贈与税の配偶者控除 1,500万円<2,000万円 ∴1,500万円
例②)居住用不動産の価額:2,400万円
(2,400万円-※2,000万円)-110万円(贈与税の基礎控除)=290万円(贈与税の課税価格)
※贈与税の配偶者控除 2,400万円≧2,000万円 ∴2,000万円
290万円×15%-10万円=335,000円(贈与税額)
なお、例②にあるように配偶者控除は贈与税の基礎控除とは別に控除をすることができますので、当該居住用不動産の贈与により控除を受けることができる金額は2,110万円が最大となります。
2. 適用要件
(1)婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
(2)配偶者から贈与された財産が、居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること
(3)贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること
3. 手続
次の書類を添付して、贈与税の申告をすることが必要です。
(1)財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本又は抄本
(2)財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し
(3)居住用不動産の登記事項証明書その他の書類で贈与を受けた人がその居住用不動産を取得したことを証するもの
なお、金銭ではなく居住用不動産の贈与を受けた場合は、上記の書類のほかに、その居住用不動産を評価するための書類(固定資産評価証明書など)が必要となります。
4. 相続税の生前贈与加算との関係(特定贈与財産の生前贈与加算不適用)
(1)特定贈与財産とは
相続開始の年の前年以前に贈与により取得した財産で、配偶者控除の適用を受けたもののうち控除額相当額部分又は配偶者控除の適用を受けたことがない場合において相続開始年分の贈与により取得した財産のうち配偶者控除の適用があるものとした場合の控除相当額部分を「特定贈与財産」といいます。
(2)特定贈与財産の生前贈与加算不適用
相続税の計算上、相続等により財産を取得した者が相続開始前3年以内に被相続人から受けた贈与財産がある場合には、その贈与財産については「生前贈与加算」として相続税の課税対象に含めることとされています。
しかし、特定贈与財産については、相続開始前3年以内のものであっても生前贈与加算が適用されないこととされています。よって、この特定贈与財産については贈与税及び相続税の課税を受けずに配偶者へ居住用不動産を移転することができることとなっています。
5. 留意点
(1)婚姻期間が20年以上であるかの判定は、婚姻届出をした日から贈与を受けた日までの期間により判定をするものとし、その期間に1年未満の端数があっても切上げをしないこととされています。
よって、婚姻期間が19年超20年未満の場合には、配偶者控除の適用はありません。
(2)居住用不動産とは、専ら居住の用に供する土地若しくは土地の上に存する権利又は家屋で国内にあるものをいいます。よって、居住用以外(事業用店舗など)に供されている部分については、配偶者控除の適用はありません。
(3)配偶者控除は、同一配偶者間での贈与については一度のみの適用となっています(別の配偶者との婚姻期間が20年以上となった場合は。改めて配偶者控除の適用を受けることができます。)。
(4)配偶者控除を超える部分の金額については、贈与税の課税対象となるため節税策として行う場合は、予想される相続税などの負担を検討した上での適用選択をする必要があります。
まとめ
居住用不動産(宅地部分)については、小規模宅地等の特例の適用など相続税の計算には別途特例がありますので、やはり相続税を含めて検討をする必要があります。