大家業をこれから始めるという人の多くは、会社勤めなどでお給料をもらっています。今回はそういう方が間違えやすい経理方法について解説します。
1.所得の種類が違う
(1)給与と家賃収入はまったく別物
個人に対する所得税の世界では、収入は10種類に分けられ、それぞれに対する課税の方法が異なります。これは同じ収入と言ってもそれぞれに性格が異なるからという理由で、言うなれば当局が納税者に配慮してくれているのですが、一方で、この種類分けが所得税を複雑にしている原因の一つでもあります。
所得税法では、給料や役員報酬、アルバイト代などの「労働の対価」は「給与所得」といいます。一方、家賃収入は「不動産所得」といい、個人商店やフリーランスなどの「事業所得」とは分けています。いわば特別扱いしているような感じです。
(2)同じ口座にしない方がよい
所得税の世界では2つの収入の性格も課税の方法も違うのですから、できれば給与が振り込まれる口座と大家業の口座は別にした方がいい、というわけです。
2.税金の計算の際に合算する
(1)なぜ「合算」すると得なのか
2つの「収入」は別物と言っても、個人の税金を計算する際には、最終的には両方を合計します。給料からは「給与所得控除」という一定の計算方法で算出される「経費」が差し引かれ、これと、家賃収入からいろいろな経費を差し引いた残りを合計します。ざっくり言うと、この合計したものに税金がかかります。
ですから、もし家賃収入がマイナスになったりすると、給料と合算すると金額が少なくなることがわかると思います。給料は年末調整によってすでに税金計算を終えているので、つまりこのマイナス分にかかる税金が多く納められていることになりますので、確定申告をすると税金が戻ってくることになります。例えばマイナス分が50万円だとすると、税率10%なら5万円が戻る計算になり、その年に納める住民税も5万円少なくなる計算になります。
(2)なぜ「不動産所得」は得なのか
給与と赤字を合算できるのは不動産所得だけでなく、事業所得も合算できます。
これを悪用して、実際には活動していないのに事業をしていることにして赤字の申告をし、税金の還付を受けようと提案する「税金コンサルタント」などという連中がいます。もちろんそれは違法なので、中には本を出していた著者で逮捕された人物もいます。
当局もこの「合算」には目を光らせていて、事業実態が無いものは、合算できない「雑所得」であると認定して合算そのものを認めない指導を行っています。
その点、事業実態が明白である大家業は有利であると言えます。