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岩松正記の数字・大事・いい感じ!
第二十回「一括払いした保険料の扱いについて」

大家業においては、物件を購入した際に保険料を一括で支払う場合があります。今回はその処理方法について説明します。

1.損害保険料の一括払いは要注意

(1)全額が経費にはならない

新築はもちろん築古の物件を購入する際にも、火災保険や地震保険などの損害保険への加入が義務付けられることがあります。その際、数年分の保険料を一括で納めることになる場合がほとんどですが、この保険料は、支払った全額をその年の経費にすることはできません。

保険料は数年分をまとめて納めていますので、当然に、その効果が及ぶ年数に振り分けて経費にすることが求められます。

(2)費用ではなく資産

一括払いの場合、火災保険と地震保険が一つの契約書に記載されていることがほとんどです。一般には、火災保険が10年、地震保険が5年、というケースが多く見受けられます。
この場合、支払保険料をそれぞれの金額に分け、さらに年数で割って当該年ごとに金額を振り分けなければなりません。この扱いは固定資産の減価償却費の計算方法と同じと考えて構いません。
経費にできない分は資産に計上し、翌年以降に残高を繰り越していきます。そして翌年にはまた同じように、1年分を経費にしていくということになります。

一括払いはキャッシュフロー上は当然に不利な支出ですから、その金額には注意しておきましょう。

2.所得控除との関係に注意

(1)大家業ではどっちがお得?

大家業において損害保険料は基本的に全額が経費になりますが、これはアパートやマンション等にかかる保険料に限られます。

一方所得税の計算上では、損害保険料のうち地震保険料のみが全額所得控除の対象となりますが、これは自宅分でも事業用でも区分がありません。

ただし、所得控除の場合は上限額があるので(50,000円)、基本的には大家業の経費にした方が有利だということは言うまでもありません。

(2)生命保険は所得控除のみ

保険と言えば生命保険料の扱いについても気をつけなければなりません。
生命保険料は所得税の計算上は経費とはせず、所得控除という形で税金を減らす効果があります。その金額は支出額そのものではなく、所定の方法によって計算された金額のみが税金の計算に使われ、しかもこちらにも上限額があります。
大家業を営む上では、生命保険料は事業には関係のない支出になることにご注意ください。

3.まとめ

大家業において損害保険料は必ず発生する経費です。
その取扱いには十分に留意しましょう。

ABOUT ME
岩松正記
相談指名数東北・北海道地区1位になったこともある税理士。 山一證券の営業、アイリスオーヤマの財務・マーケティング、ベンチャー企業の上場担当役員等10年間に転職4回と無職を経験後に開業。地方在住ながら東京から米国・東南アジアにまで顧客・人脈を持つことから、税務だけでなく様々な投資情報の提供も行っている。ロータリークラブ、青年会議所等で役員を歴任。 税理士会の役員に就く他、元査察の税理士に仕えていたため税の世界の裏事情にも詳しい
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