よく「家賃を経費にして節税」等々といったことを耳にする機会がありますが、果たしてそれは本当なのか。
今回のテーマは「自宅と経費」です。
1.誰に払うものなのかを考える
(1)個人と法人で異なる
個人で営む大家業で「自宅を経費」と言う議論を整理すると、家賃を誰に支払うのかという点に帰結して以下のパターンに分けられます。
ア 個人が他人に払う
イ 個人が自分の法人に払う
ウ 個人が自分の物件に払う
アについては、間違いなく実際にお金が動くので、それが妥当なものなのかどうかを考えれば済む話です。
ただしイとウの場合は、いわば自分で自分に家賃を払うような形になるということに留意しなければなりません。
(2)受け取った方は何になるのかを考える
イは法人の売上(受取家賃)になるのは明白です。支払う方で経費になろうとなるまいと、法人は別人格ですから売上になります。
ウは、受け取った方が売上(家賃収入)になりますが、ここでよくよく考えますと、大家業の不動産所得の経費(支払家賃)が、不動産所得の家賃収入になっていることにご注意ください。自分で自分に支払って自分で売上に計上するという、なんとも不可思議なことになるわけです。
2.「経費」とは何かを忘れずに
(1)経費と対になるものは?
さて、そもそも「経費」とは何でしょうか。
これは一言で言えば、「利益をあげるために使ったお金」のことです。従ってここで改めて考えなければらないことは、「自宅(の家賃)を経費にする」とは、大家業における不動産収入に必要な活動を自宅で行い、その該当部分を経費にする、ということなのです。そうすれば、事務所家賃ならともかく、生活部分がある自宅家賃「全額」を経費にすることは明らかに妥当ではない、と理解できると思います。
(2)関連費の処理も行う
これまでも何度も出てきていますが、自宅部分など生活に関わる支出を経費にできるかどうかには、事業割合を計算しなければなりません。今回はその割合については割愛しますが、家賃の事業割合を算出して経費にする場合、それに関わるその他の経費、具体的には水道光熱費や電話代、固定資産税なども事業割合を計算して経費にすることができることになります。
しかし、自宅部分の経費化には「自分が自分に支払う」という形になるのだ、という点に注意してください。これをきちんと説明できる形にしていないと、万が一の場合には経費を否認される可能性があることをお忘れなく。